ハチにも天敵がいる!ハチとほかの生き物の関係をのぞいてみよう!

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ミツバチと巣箱とハチクマ

衣服を突き破ることもあるほど強力で鋭い毒針を持つハチは、人間にとって脅威の存在ですよね。しかし、そんなハチとその他の生き物の関係について視野を広げて見てみると

「ハチが恐れるような、ハチの天敵と呼べる強い生き物が知りたい!」 「人間以外にも、ハチを苦手とする動物はいないの?」

などの疑問は浮かんできませんか?

生物の種と種の間には、食べる・食べられるの関係があります。これが食物連鎖です。一般に、食物連鎖の中では、食べられる側が下位、食べる側が上位とされ、食べられる側から見ると、食べる側は天敵となります。

もちろんハチにも、ハチを捕食する上位の天敵生物も、逆にハチが捕食する天敵の立場になる、下位の生物も多く存在しています。そしてこのハチと他の生物との関係性を上手く利用できれば、ハチの駆除や、ハチを使った他の害虫の駆除ができる可能性が出てきます。

それでは、ハチはどんな生き物を苦手としており、逆にどんな生き物から苦手とされているのでしょうか。ハチとその他の生き物との関係から、さらにその関係の有効な活用法の可能性まで、詳しく解説していきます。

ハチにも苦手な生き物はいる!ハチの天敵について知ろう

ハチクマ

ハチは人間を襲うほど強さを持つ生き物ですが、この世で最も強いわけではありません。というのも、私たち人間がハチを苦手としているように、ハチにも苦手とする天敵の生き物がいるからです。

スズメバチやアシナガバチ、ミツバチといった複数のハチに共通する天敵の一例としては、以下の生き物が挙げられます。

鳥の中には、ハチを餌として食べる種類がいます。

特にハチクマという猛禽類は、毒針に対抗できる羽毛を持つなど、全く恐れずにハチを捕食します。更に、草食が中心のニワトリも、実はハチを捕食することがあります。

このように、多くの鳥が食物連鎖においてハチの上位にいるのです。

  • 肉食の虫

虫には肉食性の種がいて、ハチを捕食対象として見ている虫も多いです。例外はありますが、肉食性の虫の中でも特に大型の虫には、ハチを捕まえて食べる種類が多くいます。

  • 寄生虫

外面的には凶暴なハチでも、寄生虫に内側から攻められた場合、手も足も出なくなります。そのため、体の中に寄生する一部の種類の虫も、ハチにとっては恐ろしい天敵です。

  • クマ

クマはミツバチ・アシナガバチ・スズメバチに共通した天敵です。ミツバチが作るハチミツを狙うだけではなく、ハチの幼虫も成虫も全てを好物として捕食します。

しかもクマの体毛や皮膚はハチの毒針が刺さりにくいほどの強度があるので、ハチは手も足も出ません。そのため、クマは完璧な天敵と言えるでしょう。

各種類のハチに共通する天敵は、以上のようなものが代表例です。

しかし、ハチの天敵はこれだけではありません。ハチの種類ごとに天敵を確認をしていくと、ハチの種類によって苦手とする生き物も変わってきます。

それでは次に、ハチの種類ごとの天敵を具体的にご紹介していきましょう。

スズメバチの天敵

スズメバチの天敵は、一部の鳥や虫、クマなどです。ただし、天敵となる虫の多くはスズメバチを食べる存在でありつつ、スズメバチに食べられることもあります。

以下が、そんなスズメバチの天敵となる生き物の一例です。

  • カブトムシ

カブトムシはスズメバチに比べて体型が大きく、力も強いです。そのため、反撃を恐れて、スズメバチの方からカブトムシに近づくことはあまりありません。樹液を取り合うケースもありますが、基本的にはカブトムシが勝ち、樹液の餌場を独占するというケースが多いです。

  • オニヤンマ

オニヤンマは大型のトンボの一種です。トンボというと穏やかな印象がありますが、実は肉食であり、オニヤンマのような大型のトンボはスズメバチを捕食するだけの力を持っています。

しかし、オニヤンマもスズメバチの毒針の逆襲に遭うケースもあるため、食物連鎖において、完全にスズメバチの上位にいるわけではありません。

  • オオカマキリ

カマキリの中でも大きな体と鋭い鎌を持つオオカマキリは、スズメバチを捕食する虫の一つです。自慢の鎌を器用に使い、スズメバチを押さえ込む戦法で捕食します。

ただし、スズメバチの毒針攻撃は、オオカマキリに対しても有効です。そのため、オオカマキリがスズメバチに負けることも珍しくありません。

  • アブ

ハチによく似た見た目をしているアブは、スズメバチを捕食する天敵として知られています。その攻撃スタイルは、不意打ちで尖った口をスズメバチに突き刺し、体液を吸い取るというものです。

アブもその他の虫と同じように、スズメバチに捕食される対象でもあります。そのため、不意打ちといった奇襲攻撃ではなく正面から戦う場合は、スズメバチに負けてしまうケースも多々あるようです。

寄生虫

  • スズメバチネジレバネ

ネジレバネという寄生虫の一種であるのが、スズメバチネジレバネです。その名称からも分かるように、スズメバチに寄生するという特性を持っています。

スズメバチネジレバネに寄生されたスズメバチは、動きを完全にコントロールされてしまうのが特徴です。そうなると、寄生された働き蜂はコロニー内での仕事を行わなくなり、女王蜂が寄生された場合は産卵をしなくなるので、コロニー全体が衰退することになります。

  • スズメバチタマセンチュウ

スズメバチタマセンチュウは、一般的に線虫と呼ばれる細長い寄生虫の一種です。この寄生虫に寄生されたスズメバチは、卵巣の機能が障害されてしまい、産卵ができなくなってしまいます。

人為的にスズメバチタマセンチュウを利用し、スズメバチの繁殖を抑制する研究もされています。

アシナガバチの天敵

アシナガバチ特有の天敵は、同じハチ類に属する虫が多いです。また、本来はアシナガバチが捕食する立場であるガですが、ウスムラサキシマメイガという、アシナガバチに寄生して天敵となる種もいます。

それでは、これらの天敵が具体的どのような生き物たちなのか、詳しく解説していきます。

  • スズメバチ

同じハチの種類でありながら、スズメバチは食物連鎖の階層においてアシナガバチの上位にいる天敵です。スズメバチは幼虫の食料として、アシナガバチの幼虫をターゲットにします。

そのスズメバチの中でも特にアシナガバチの天敵となるのが、ヒメスズメバチという種類のスズメバチです。小さい巣であれば、たった一匹のヒメスズメバチによってその巣が壊滅してしまうこともあります。

  • アリ

アリはアシナガバチの卵や幼虫を捕食対象としており、コロニーを壊滅させるほどの影響力を持つ天敵です。まだ働き蜂が生まれていないような巣作りの初期段階で、女王蜂がいない時を狙い、巣に入り込んできます。

アシナガバチが巣を作りやすい場所が、アリが生息する地面から近く、容易に到達できるという点もアリに襲われる理由の一つです。

寄生虫

  • ウスムラサキシマメイガ

ガは本来、ハチに捕食される側の生き物になります。しかし、ガの中でもウスムラサキシマメイガという種は、アシナガバチ(セグロアシナガバチ)を捕食する立場に位置する存在です。

ウスムラサキシマメイガの幼虫はアシナガバチの巣に寄生し、アシナガバチの幼虫や蛹を食べて成長します。さらに、勢力が衰えたアシナガバチの巣の中で産卵が行われ、そこでウスムラサキシマメイガの子供たちが育っていきます。そのため、寄生されたアシナガバチは大切な幼虫などを奪われるだけでなく、巣まで利用されてしまうのです。

ミツバチの天敵

ミツバチはハチの中でも比較的穏やかで弱い種であるため、他の動物から狙われやすいという特徴があります。そのため、ミツバチ特有の天敵の種類の数は多いです。

その数ある天敵の中でも、代表的な生き物をピックアップしてご紹介します。

  • スズメバチ

ミツバチの天敵として知られているのが、スズメバチです。その中でも、特にオオスズメバチは体格も大きく、肉食性のオオスズメバチにとって、ミツバチは格好の捕食対象となります。

しかし、ミツバチもただやられるわけではありません。スズメバチへの対抗策として、ミツバチは集団になって挑む戦法を取ります。ニホンミツバチは集団でスズメバチを囲んで熱を発生させる方法、セイヨウミツバチは同様に集団で囲んで窒息させる方法を取り、スズメバチをやっつけるのです。

ただ、大勢のスズメバチに巣が襲撃された場合はミツバチの抵抗も及ばず、巣が壊滅するほどにやられてしまうというケースも多くあります。

寄生虫

  • スムシ

ミツバチの巣に寄生する天敵であるのが、スムシです。スムシは通称であり、正式な名称はハチノスツヅリガとウスグロツヅリガと言います。なお、ニホンミツバチの巣に多く寄生するのはウスグロツヅリガで、セイヨウミツバチの巣に寄生するのがハチノスツヅリガです。

スムシはミツバチの巣の素材である蜜蝋を好物としており、スムシが過剰繁殖すると巣が食べられてしまいます。なお、ミツバチそのものがスムシに捕食されるわけではありません。巣の多くを食べられてしまうと、ミツバチは住み辛さを感じ、その巣を離れて別の場所へ移動します。

  • ダニ

ダニの仲間には、ミツバチに寄生する種類があります。その代表例であるのが、アカリンダニ・ミツバチヘイギダニ・ミツバチトゲダニなどです。

アカリンダニはミツバチの気管支に寄生し、そこでミツバチの血液を食べて生活します。寄生されることでミツバチに起こる症状は、本来の働きを阻害されて餌の確保や育児ができなくなるなどです。これにより、冬場になると働き蜂がいなくなり、巣が崩壊してしまいます。

ミツバチヘイギダニやミツバチトゲダニなどは、ミツバチの幼虫に寄生して、その体液を吸う寄生中です。体液を吸われた幼虫は、発達に障害が出て正常な働き蜂になりません。その結果、コロニーの弱小化が起こります。

そのほかの動物

  • カエル

ミツバチはカエルの捕食対象の一つです。そのため、カエルが多く棲息する水場近くにミツバチの巣がある場合、そこがカエルのターゲットになる可能性が高くなります。

  • ツバメ

小型の虫を捕食するツバメは、外を飛んでいるミツバチも捕食します。ツバメの活動が盛んになる暖かい季節は、ミツバチにとってツバメに狙われやすい季節でもあります。

ツバメは人間にとって農作物を守ってくれる有益な鳥ですが、ハチにとっては厄介な存在です。

ハチの天敵を駆除などに利用することはできる?

「数多くいるハチの天敵を上手に利用すれば、ハチを駆除したり巣を作られるのを予防したりできる可能性があるんじゃないの?」

ハチに天敵がいるということを知ると、そのような考えや希望を持たれる方も多いのではないでしょうか。結論から述べると、天敵を利用してハチの駆除や予防を行うのは難しいです。

なぜ天敵を利用した駆除が難しいのか。それは、天敵となる生き物を人為的にコントロールすることが困難だからです。例を挙げると、ハチに共通した天敵であるクマは凶暴で危険で人が簡単に扱えないですし、ハチを捕食する数多くの虫も、人がコントロールすることは簡単ではありません。その他の動物についても、同様に人為的コントロールは困難です。それゆえに、天敵を利用したハチの駆除は、現時点では難しいと言わざるを得ません。

一方、天敵を利用した駆除について希望が持てる話もあります。それは、先ほども紹介したスズメバチタマセンチュウという寄生虫が、スズメバチに対する生物的防除材として利用できる可能性があるということです。

スズメバチタマセンチュウは、女王蜂を不妊化させる寄生虫です。しかも寄生対象には、人への被害が大きいオオスズメバチやキイロスズメバチといった凶暴な種類が該当します。そのため、この寄生虫を人工的にスズメバチに寄生させることができれば、スズメバチの繁殖を抑制させることができるでしょう。 (参考:森林総合研究所 スズメバチの手強い天敵スズメバチタマセンチュウー寄生される種類と国内分布明らかに)

ただし、スズメバチタマセンチュウの研究や能力の解明は途中であり、まだ人工的な利用方法が確立しているわけではありません。今後の研究の進展に期待をしたいところです。

ハチを天敵とする生き物

寄生蜂

ハチにとって天敵が存在しているように、ハチを天敵として恐れている生き物も数多く存在しています。

それでは以下に、スズメバチ・アシナガバチが天敵となる生き物を、それぞれのハチごとに紹介していきましょう。

スズメバチを天敵とする生き物

スズメバチは肉食であり、他の虫を捕食する虫です。そして、その凶暴性から虫の世界では食物連鎖の上位に位置しているため、スズメバチを天敵とする生き物には、数多くの虫が該当します。

以下が、スズメバチを天敵としている虫の一例です。

  • バッタ
  • セミ
  • カナブン
  • ミツバチ
  • アシナガバチ

これに加えて、スズメバチの天敵の項目でもご紹介したようなクモやカマキリなど、スズメバチの天敵でありながら、スズメバチに捕食される立場である虫がいるというのも特徴です。

また、上記でご紹介した虫は一例であるため、食物連鎖の上位にいるスズメバチを天敵とする虫はそれ以外にも沢山存在しています。

アシナガバチを天敵とする生き物

アシナガバチを天敵とする生き物は、ガやチョウの幼虫です。

アシナガバチも肉食であるため、スズメバチと同様に他の虫を捕食して食べます。その中でも特に、ガやチョウの幼虫である毛虫や芋虫などをよく捕獲する傾向があるのです。捕獲したチョウやガの幼虫は、肉団子にされてアシナガバチの幼虫の餌となります。この特性から、アシナガバチは毛虫や芋虫を駆除してくれる、益虫としても有名です。

害虫の駆除に天敵のハチを利用!?寄生蜂の利用方法

ハチの種類の中には、他の虫に寄生することで生命を繋いでいる寄生蜂という種類が存在しています。この寄生対象の虫が、人にとって害虫であるケースも多く、寄生蜂が害虫駆除に一役買ってくれている場合があるのです。

では具体的に寄生蜂とはどのようなハチであり、どんなメリットを与えてくれるのか、逆に人への悪影響はあるのか見ていきましょう。

寄生蜂はどのようなハチ?

  • 寄生蜂の概要

寄生蜂とは、他の生物に寄生して生きるハチの仲間を指します。具体的には、コバチ上科・ツチバチ科・コマユバチ科・ヒメバチ科などのグループに属するハチが該当します。

寄生する対象は寄生蜂の種類によって変わります。そのため、ガやチョウの仲間に寄生する種もいれば、ゴキブリやカブトムシに寄生する種、植物を寄生対象としている種がいるなど多種多様です。

この寄生蜂の仲間には、農作物を荒らす害虫に寄生し、その活動を抑制してくれる種類がいます。農産物の生産において寄生蜂を利用して害虫駆除をすれば、農薬を使用せずに農作物を作ることができるのです。

  • 人間への影響

生物農薬として認められている寄生蜂については、人間への影響は少ないです。そのため、安心して利用できるでしょう。

ただし、寄生蜂の全てを人間が安心して利用できるわけではありません。寄生蜂は害虫駆除をしてくれる益虫となる種もいれば、マダケなどの植物に寄生して、その生育を阻む害虫となる種もいます。そのため、全ての寄生蜂が人間にとってメリットがあるものではありません。

寄生蜂を害虫駆除に応用する方法

自然の生き物である寄生蜂を応用して害虫駆除をするためには、寄生蜂がターゲットとなる害虫に寄生しやすい環境を作ることが重要です。

まずは寄生蜂をあらかじめ捕獲しておいたターゲットとなる害虫に寄生させます。この過程は、それを専門に行う業者もあるため、そこに依頼をして寄生された害虫の個体を購入するのが一般的です。

そうしてハウスのような密閉された空間で、その寄生された害虫を放ちます。空間を密閉するのは、寄生された個体が逃げてしまわないようにするためです。

あとは放置するだけで、寄生された害虫から次の害虫へ、感染するように徐々に寄生蜂に寄生された害虫が増えていきます。寄生された害虫の数が増えるほど、ターゲットの害虫は衰弱するなどして繁殖ができなくなるので、農作物に悪さを働けなくなるのです。

このような方法で、寄生蜂は天然の害虫駆除法として利用されています。

まとめ

ハチは虫の世界では強いため、その存在を天敵としている虫は多くいます。しかし、他の虫でもハチに勝てる能力がある種や、鳥やクマなど、ハチが太刀打ちできない生き物も多くいることが分かりました。

また、ハチは上手に利用することによって、害虫を駆除する上で役立つ存在にもなります。

それらの点を踏まえて、この記事のポイントとして押さえていただきたいのは、以下の3点です。

  • 凶暴なハチでも、天敵がいる。しかし、その天敵を利用してハチを駆除するのは現時点では難しい。
  • スズメバチやアシナガバチは虫の世界では食物連鎖の上位にいるため、ハチを天敵とする虫は多くいる。
  • 害虫に寄生してやっつける寄生蜂を利用すれば、農薬を使わずエコに害虫駆除を行える可能性がある。

以上のポイントを押さえて、ハチと上手に付き合っていけるようにしてくださいね!