身近でもよく見かけるアシナガバチは、スズメバチに比べると大人しく、攻撃性も低いとされています。
ですが実際には、アシナガバチに刺される被害も発生しており、場合によっては命を落とす可能性もあります。
そのため、刺されてしまった時のことを考えると、
「もしもアシナガバチに刺されたら、どんな応急処置をすればいいか分からない!」
「アシナガバチの毒は、他のハチより強力?出る症状にどんな違いがある?」
と、不安になりますよね。
正しい情報を知っておくことは、このような疑問や不安を解消したり、アシナガバチに刺された時に対処をしたりする上で重要です。
それでは、アシナガバチに刺された時に出る症状や他のハチ刺されとの違い、刺症事故の事例、被害を最小限に抑えるための応急処置や予防法などを詳しく解説していきましょう。
目次
アシナガバチに刺されたら、的確な応急処置をしよう!
アシナガバチに刺されてしまったら、その症状や身体への負担を軽減するために、的確な応急処置をする必要があります。
応急処置は、以下の順序で行います。
- 安全な場所へ避難する
アシナガバチに刺された場所は、近くに巣があったり仲間がいたりして、他のアシナガバチに刺される危険性が高いです。
そのため、まずは他のアシナガバチに襲われないように、アシナガバチが追ってこない安全な場所へ避難してください。
- 毒針が残っている場合は、慎重に除去する
アシナガバチはミツバチとは違って、刺された部分に針が残ることはほとんどありません。
しかし、もしも針が残っている場合は、ピンセットなどを使って慎重に取り除きましょう。
- 毒が体内に入らないように処置する
体に入る毒を少なくするために、刺された部位から毒をできる限り取り除くことが重要です。
1番よい方法としては、ポイズンリムーバーなど、毒抜き専用のアイテムの使用をお勧めします。
毒抜きをするアイテムを持っていない場合、指でつまむようにして毒を出してください。そして、出てきた毒を流水で洗い流しましょう。
なお、口で毒を吸うのは絶対に止めましょう。これは、毒が口内から体内へ吸収されたり、刺された患部を不潔にしたりしてしまう可能性があるためです。
- 虫刺され用の軟膏を塗る
アシナガバチの毒によって起こる腫れ・痒み・痛みには、ステロイドや抗ヒスタミン成分が含まれた虫刺され用の軟膏が効きます。適量を刺された患部に塗布してください。
- 患部を冷やす
保冷剤や氷を入れた袋を刺された患部に当てて冷やしましょう。
冷やすことによって、腫れや痒みを軽減できるほか、冷やした部位の血流が抑制されるため、毒が体に入るスピードを遅くできます。
- 医療機関を受診する
ハチの毒を中和する専門的な処置は、医療機関でしか行うことができません。
毒による症状が全身に出る場合はもちろんのこと、局所的な軽症であっても、症状を悪化させないためには医療機関を受診するのがいいでしょう。
アナフィラキシーに注意!こんな症状が見られたら、救急車で病院へ
アナフィラキシーとは、短時間の内にアレルギー症状が全身に起こることを指します。
アシナガバチに刺されると、注入された毒の成分によって、このアナフィラキシーが起こることがあります。
アナフィラキシーは身体に重篤なダメージを与え、時として命を奪う可能性があるものです。
そのため、アナフィラキシーの症状が現れた場合は、一刻も早く医療機関で専門的な治療を受けなければなりません。
アシナガバチに刺された時に、特に気をつけるべきなのは下記のような症状です。
- 呼吸がしづらい
- 血圧低下
- もうろうとするなどの意識障害
- けいれん発作が起こる
体が上記のような反応を示した場合、アナフィラキシーショックを起こしている可能性があります。
もしもアシナガバチに刺されてから数分の間にこれらの症状が確認できれば、早急に救急車を呼んで医療機関を受診するようにしましょう。ショック状態に陥ると、命を落とす危険性が高いので、注意が必要です。
ハチの毒が体に入って起こるアナフィラキシーは、一般的に刺されてから5分から10分程度の間に発症します。これほど短時間でアナフィラキシーが起こるのは、ハチの毒が毒針によって血中に直接入るためです。
アシナガバチに刺されたあとの症状と注意点
アシナガバチに刺されてしまったら、その毒によって体に大小様々な症状が起こります。
その症状について、「この症状は危険なもの?」や「いつまで症状が続くの?」といった不安が次々と襲ってくるのではないでしょうか。
症状に関する不安をなくすためには、症状の種類やその重症度、効果のある対処法、そして症状を悪化させない注意点を知っておくことが必要です。
刺された場所に出る局所症状
【主な症状】
局所症状とは、アシナガバチに刺された部位やその近くに起こる症状です。主な局所症状としては、患部の腫れに加えて、痛みや痒みが挙げられます。
また、時間が経過して腫れや痛みが軽減しても、しこりが残ったり痒みがしばらく続いたりするのも特徴です。
ミツバチに比べると、アシナガバチは出す毒の量が多いため、局所症状についてもミツバチより重いものになる傾向があります。
【症状の期間】
痛みの症状は、数時間から1日の間に消失することが多いです。しかし、痛み以外の局所症状全体が消えるのは、数日から1週間以上かかります。
また、症状が続く期間は、ハチに刺された経験の有無や刺された人の体質によっても変わるため、個人差が出るという点も意識しておきましょう。
【効果的な対処法】
痛み・痒さ・腫れといった症状は、セロトニンやアセチルコリン、ヒスタミンなどの、アレルギー物質によって起こります。
そのため、局所症状の軽減にはアレルギー反応を抑制する、ステロイド剤や抗ヒスタミン剤を使用することが有効です。
上記の抗アレルギー成分が含まれた虫刺され用の軟膏も多く流通していますので、含有成分を確認して用意し、患部に直接塗布しましょう。
また、氷や保冷剤を使って患部を冷やす方法も効果があります。
これは冷やすことによって、痛さや痒さなどの不快な感覚を軽減でき、さらに患部の血流を抑制して毒が体に回るのを遅らせられるからです。
刺された場所以外に見られる全身症状
【主な症状】
全身症状は、ハチに刺された部位以外で起こる症状です。その症状は、軽微なものから重度なものまで幅広くあります。以下の症状が、具体的な症状の例です。
軽度な症状
- 異常な発汗をする
- 刺された場所以外の皮膚の異常(蕁麻疹・腫れる・赤くなる・痒くなる)が起こる
- 口腔内の粘膜が腫れる
- まぶたに腫れが出る
中程度の症状
- 呼吸器の異常(咳や息切れ・呼吸時の音)が起こる
- 腹痛や下痢・嘔気・嘔吐がある
- 口の中が痺れる
重度の症状
- 呼吸が困難になる
- 血圧が低下する
- 意識障害が起こる
- けいれん発作が起こる
このように、刺された部位とは関係なく、体の全体に多様な症状が起こることがあります。アシナガバチの毒は、スズメバチの毒に近い成分であるため、全身症状が出た際に重篤化しやすいのが特徴です。
【症状の期間】
軽度から中程度の症状の場合、早急に医療期間を受診し、治療を受けたならば、24時間程度で治る傾向があります。
重度の症状の場合、アナフィラキシーショックによって命を落とす前に適切な治療が受けられれば、1日の入院加療で治療が完了するケースも多いです。
しかし、遅発性の症状が起こるかもしれないため、2日程は念のために静養した方がよいでしょう。
【効果的な対処法】
症状の程度に問わず、全身症状の対処法として医療機関を受診することが必要です。
軽度から中程度の症状であれば、ステロイドや抗ヒスタミン成分を投与してもらうことで、症状が軽減します。
重度の症状が出たり、アナフィラキシーショック状態であったりすれば、アドレナリン投与、気道の確保や酸素吸入といった専門的な治療が効果的です。
また、全身症状の応急処置として、自己管理型のアドレナリン注射器である「エピペン」を使用する方法もあります。
エピペンは、医療機関を受診して処方してもらう必要がありますが、過去にハチに刺された経験があれば、万が一のことを考えて、常に持ち歩いておくとよいでしょう。
刺されたあとに注意するべきこと
アシナガバチに刺されてしまったあとの行動は、毒による症状の悪化や二次被害を防ぐことに繋がります。特に、以下に挙げるような項目については、十分注意しておく必要があるでしょう。
- 血流がよくなると毒が回りやすいので、不調を感じる間は激しい運動・飲酒・入浴などを控える
- 傷口を掻くと細菌が感染して腫れが酷くなる危険性があるため、痒くても掻かないようにする
- 車の運転など、注意力が必要な行動をしない。大きな事故に発展する可能性があります
- 症状が消えても、刺されてから2週間くらいは遅発性の全身性アレルギーが生じる可能性があるので、それに備えておく
応急処置や治療が十分に行えていたとしても、そのあとの行動によって症状が悪化したり事故が起こったりする可能性があります。
上記に挙げた注意するべき項目はもちろん、刺されたあとはできるだけ無理をしないことを心がけましょう。
アシナガバチに刺されないための予防法
アシナガバチが人を刺すのは、人間の側がアシナガバチが攻撃する理由を作っていたり、十分な予防ができていなかったりすることが多いです。
そのため、アシナガバチに刺されない予防法を知っておきましょう。
【主な予防法】
- 巣に近づいたり触れたりしない
- アシナガバチを攻撃しない
- 家のまわりの巣が作られそうな場所にハチ用殺虫スプレーを使用し、巣が作られるのを防ぐ
- 家のまわりに巣が作られていたら、業者に依頼するなどして速やかに駆除する
- 攻撃態勢に入ると濃い色を狙って攻撃するので、レジャーなどの場合は濃い色のものをできるだけ身につけないようにする
- 香りに敏感なため、香水などの強い香りがするものの使用を控える
以上のような予防法を実践すれば、アシナガバチからの被害に遭う可能性を低くすることができます。
アシナガバチによる刺症の特徴
アシナガバチは穏やかな性格をしています。
それでも、何らかの理由で人を敵とみなせば攻撃をしますし、実際にアシナガバチに襲われたことで死亡に至った事故も報告されています。
実は、アシナガバチは凶暴なスズメバチに近い種類のハチです。
そのため、攻撃態勢に入ると何度も毒針で刺してくるという攻撃の仕方や、毒針から分泌される毒の成分など、スズメバチと似ている特徴があります。
このような理由からスズメバチと同様に、アシナガバチに襲われてしまうと、毒によるアナフィラキシーによって重篤な症状が出て、死亡に至る可能性もあるのです。
自分の身を守るために、アシナガバチに対しても「刺されるかもしれない」と警戒し、予防策を取ることが大切でしょう。
種類が違うハチでもアナフィラキシーに要注意!
ハチの毒によって起こるアナフィラキシーの症状は、刺された回数が増えるほどに重症化しやすい傾向があります。
しかも、刺されたハチの種類が違ったとしても、そのリスクは高くなるという点に注意が必要です。
代表的な人を襲うハチの種類としては、アシナガバチに加えて、スズメバチ、ミツバチが挙げられます。これらのハチの毒は種類によって多少成分が違いますが、共通した成分も多いです。
いずれかのハチに1度刺されていると、他のハチに刺された時にもアナフィラキシーが出る可能性が高くなるので注意してください。
もしも過去に、種類を問わずハチに刺された経験があれば、アナフィラキシーを起こしやすい体質になっていないかなどを調べるために、医療期間でアレルギー検査を受けるといいでしょう。
体質は時間の経過によって変わる可能性があるため、定期的な検査(できれば1年に1回)を受けることが望ましいです。
まとめ
比較的穏やかな性格であるアシナガバチも、刺されてしまうと命を落とす可能性はあります。
もしも刺されてしまった時は、今回ご紹介したような順序に沿って的確な応急処置をし、医療機関を受診しましょう。
また、普段からアシナガバチに刺されないような対策や心構え、ハチ毒への耐性をチェックするなどをしておくことも大切です。
それでは、以上を踏まえた上で、この記事のポイントとして押さえておいて欲しいのは以下の3点です。
- 命を落とす危険性があるアナフィラキシーは、ハチに刺されて数分間で起こるため、その兆候があればすぐに救急車を呼ぶ
- 毒による局所症状や全身症状は、適切な治療を受けて安静にすれば数日で軽快する
- アシナガバチに初めて刺された場合でも、体質や過去の他のハチによる刺症により、アナフィラキシーを起こす可能性がある
以上のポイントを押さえて、アシナガバチによる被害を最小限に抑えるようにしてくださいね。