「家にネズミが出た!」となれば、食物を食い荒らされたり糞尿をまき散らされたりするんじゃないかと、心配になってしまいますよね。一刻も早く駆除したくなる気持ち、とてもよくわかります。
そしてネズミの天敵と言えば、昔から猫と相場が決まっていますが、本当に猫が解決してくれるのかどうか…、気になるところですよね。
「ネズミの糞尿って不潔だよね?何とかしたいんだけど…。」
「ネズミの天敵と言えば猫、でも本当に猫を飼ったらネズミがいなくなるのかな…?」
ここでは、そんな不安や疑問にお答えするため、今回は「猫は本当にネズミ駆除をしてくれるのか?」についてまとめてみました。
猫はネズミを駆除してくれる?!猫の行動から見てみよう
猫は狩りが得意な肉食動物で、昔からネズミを駆除してくれる動物として家畜化されてきました。猫には生まれつき狩猟本能が備わっており、ちょろちょろ動いたり、ひらひら飛んだりするような動きに反応して飛びつきます。
そのため猫の体格に対してちょうどいい大きさであるネズミなどのげっ歯類や小鳥などは、猫にとって恰好のターゲットとなります。
ネズミをモチーフにした猫のおもちゃを見かけたことはありませんか?これは、単に飼い主とのコミュニケーションを取る手段としてだけでなく、室内飼いで狩りをする必要のない飼い猫の狩猟本能を満たしてあげる狙いもあります。
猫はどんな風に狩りをするの?
猫の狩猟戦略として、獲物の発する音に耳をそばだてながら狩猟域を歩き回って狩りをする場合もあれば、身を隠して獲物が来るのをじっと待ち、獲物が来たら一気に狩りをする場合もあります。
獲物を見つけると体勢を低くし、いつでも攻撃に移ることのできる状態で静止します。そして攻撃する前になると、後ろ足で交互に地面を踏み始めます。そして高い瞬発力とともに、獲物を押さえつけたり両手で挟んだりして仕留めます。
派遣された猫が大活躍?!猫がネズミを駆除する
暖冬でネズミの増えたワシントンD.C.では、3年ほどの間にネズミ被害を訴える電話の件数が3割ほど増えました。そのためD.C.の市長は2016年、町を挙げてネズミ対策に取り組むことを宣言しました。
2017年1月、野猫を捕えて去勢手術と予防接種を施し、路地へ放すという活動が非営利団体によって始められました。人間は野猫にネズミを駆除することを期待し、その代わりに猫は人間からエサをもらったりお世話をしてもらったりすることで猫の命を助けられます。
それはつまり双方にとってWINWINの成果があると考えられています。実際にネズミの死骸が見つかり、数も減ったという報告もあります。
またその非営利団体から猫を雇った地ビール工場では、山積みにされていた麦がネズミ被害に遭っていましたが、猫が派遣されてからというものネズミの姿を見かけなくなったそうです。
参考:NATIONAL GEOGRAPHIC ネズミ退治にホームレスのネコを起用、米国
ネズミ駆除に猫がオススメできない理由3つ
猫は、その狩猟本能からネズミを捕える能力や習性があることは確かです。
けれどもネズミを駆除するためだけに安易に猫を飼うことはオススメできません。何故なら猫は生き物であり、生き物を飼育する以上は責任が伴うからです。
また、つぎの3つの理由からも、ネズミを駆除するためだけに猫を飼育することはオススメできません。
- 飼い猫はネズミが苦手であることが多い
- 猫が病気になるリスクがある
- ネズミの繁殖力に猫の狩りが追い付かない
オススメできない理由①飼い猫はネズミ駆除が苦手?!
意外かもしれませんが、すべての猫がネズミを駆除するわけではありません。中には狩りが苦手だったり、そもそもネズミが苦手で食べても嘔吐してしまったりするというケースすらあります。
特に飼い猫はネズミ駆除が苦手なことが多いという特徴があります。 その理由として、
- 母猫から狩りの仕方を教わっていない
- 猫は犬のように芸を覚えない
- 飼い猫は野良猫ほど餌に困っていない
という3つが挙げられます。
猫は母猫から狩りの仕方を学ぶから
猫の狩猟において、母猫が果たす役割は重要であると言われています。
母猫は子猫が4週齢になると、殺した獲物を巣まで持ってきて食べます。その後獲物を生きた状態で子猫のところに連れて来て、実際に殺すところを子猫に見せて狩りを覚えさせます。子猫が大きくなるにつれて母猫が獲物を殺したり食べたりする割合を減らし、殺すまでの時間を伸ばします。
その結果、子猫の頃母親から狩りの仕方を学ぶ経験を得た猫は、狩りをする率、獲物を殺す率が高くなります。
さらに兄弟姉妹がいる場合は、獲物を食べられるようになる前からお互いにレスリングごっこをし、狩りに活かしていきます。
猫は犬のように芸を覚えないから
もともと群れで生活をする犬は、リーダーの指示に従う習性があります。そのため犬にとって人間の命令を聞いて芸を覚えることは、飼い主との信頼関係を築いて、飼い主を喜ばせることに繋がります。
一方で猫は命令されて行動するのではなく、自分で考えて行動する生き物です。猫は学習能力が高いため、覚えようと思えば芸を覚えることもできますが、あくまでも行動の基準は自分のためになるかどうかなので、人間のために芸を覚える気はありません。
ただし飼い猫であっても飼い主に認めてもらいたいからとか、飼い主がネズミを捕まえることができないからといった理由でネズミを捕え、飼い主にプレゼントするというケースはあります。その場合、ネズミ以外の昆虫なども捕まえてくる可能性もあります。
そのため人間にとって都合よくネズミを捕まえるように仕向けることは難しいと言えるでしょう。
飼い猫は飢えていないから
食べるためにネズミを捕まえる野良猫と違い、飼い猫は日頃からふんだんに餌を与えられているため、ネズミをエサにしなければならないほど飢えていません。子猫の頃から親猫と離れて飼われている場合、ネズミを獲物として認識すらしない場合もありますし、それどころかネズミを怖がる個体もいるほどです。
栄養価の高い餌を与えられている飼い猫にとって、ネズミはどうしても捕まえて食べなければならない存在ではないのです。
オススメできない理由②ネズミはすごく汚い!猫が病気になる?!
猫を飼育するとなったら、猫との触れ合いは大切にしていきたいですよね。
でもネズミは排水管などを通るゴキブリなどをエサとしている場合がありますし、ネズミ自身も不衛生な場所を徘徊することがあるため、とても不潔な状態です。
そんなネズミを狩猟する猫もまた、ネズミを噛んだり食べたりする際にネズミの持つ病原菌やウィルスに感染している可能性があり、触れ合う際は注意が必要になります。
特にネズミから猫に感染する病気として、エキノコックス症・条虫症・トキソプラズマ症の3つが主に挙げられます。
エキノコックス症
エキノコックスとは本来犬やキツネにつく寄生虫です。排泄された虫卵に汚染された水や食料からネズミに感染し、そのネズミを猫が食べることによって猫にも感染します。猫がエキノコックス症に感染しても、多くは無症状、もしくは下痢程度で済みます。
しかし、人間に感染した場合はエキノコックスの幼虫が肝臓・肺・腎臓・脳などで増殖し、やがて肝機能障害や閉塞性黄疸、意識障害やけいれん発作など重篤な症状を引き起こします。初期に発見することができれば外科的な方法で取り除くことはできますが、進行してしまうと治療法はないため、予防が重要だと言えます。
条虫症
条虫とは寄生虫の一種であり、サナダムシとも呼ばれます。このうち猫条虫はネズミを介して猫に感染します。大きくなると60cmほどになり、猫の肛門から細長くて白い条虫が垂れさがって出てくることがあります。
条虫に感染しても少数であれば無症状であることが多いのですが、悪化すると食欲低下・下痢・嘔吐・腹痛などを招きます。条虫から体内から出てくるときに肛門を痒がり、地面にこすりつけるような動作が現れます。
さらに症状が進行すると、条虫に栄養を奪われてやせ細り、毛艶も悪くなって元気がなくなります。早めに気づいて対処してあげることが肝心です。
トキソプラズマ症
トキソプラズマ症はトキソプラズマという寄生虫の感染によって起こります。成猫の場合はほとんど無症状ですが、衰弱している場合は持続性の下痢や貧血などを経て神経障害を引き起こし、ふらついたりまっすぐ歩けなくなることがあります。子猫の場合は発熱・嘔吐・呼吸困難を経てほとんどのケースで死に至ります。
猫の糞便や、糞便が混じった土砂に接触することで人間にも感染することがあります。健康な成人であれば感染して発症しても無症状で済むことが殆どですが、妊娠中(特に初期)の女性に感染してしまうと、胎盤を通して胎児に感染してしまい、目や脳に障害が残ったり、流産や死産に至ってしまったりすることがあるため警戒が必要です。
オススメできない理由③ネズミの繁殖力に猫は追いつかない!
結果が膨大な数になるネズミ算という言葉があるように、一般的にネズミは繁殖力が強いことで知られています。
生後3か月ほどで出産できるようになり、そこから1年に6~7回にわたって出産し、一度に6~10匹程度の仔を産みます。つまり1年間で1つのつがいが1万匹近くにまで増えるという計算になります。
実際には環境などの制限があるのでそこまで増えることはありませんが、それだけネズミの繁殖力は強く、猫がどれだけネズミを駆除したとしても、駆除が追い付くことはないことを意味します。
猫を飼うVS業者に頼む費用!どれくらい差があるの?
「ネズミ駆除をプロの業者にお願いしたら、きっと高いんでしょう?」と思われがちですが、果たして本当にそうなのでしょうか。
この章ではネズミを駆除するために「猫を飼う」、そして「プロの駆除業者に依頼する」場合、どちらが安く済むのかについて考察していきます。
猫を飼う場合、どれくらい費用がかかるのか
猫を飼育する場合、まずは初期費用で約10万円かかると考えておいた方がよいでしょう。トイレや餌入れなどの生活用品費用や去勢手術代、ワクチンの接種費用などがここに含まれますが、猫そのものの値段によってはさらに高額になることもあります。
さらに毎月のエサ代やトイレの砂代、健康診断費用などを含めると1ヶ月に1万5千円ほどかかるとみておいた方がよいでしょう。
つまり猫を飼うには初期だけでも11万5千円ほど、場合によってはそれ以上の金額になることもあるのです。
プロの業者に依頼する場合、どれくらい費用がかかるのか
一方でプロの駆除業者に依頼する場合、業者によってもピンキリですが、1万円以下から依頼できるケースもあります。
つまりネズミ駆除のために猫を飼うのと、プロの駆除業者に依頼をするのとでは、その差額はなんと10万円ほどになることがわかりますね。
まとめ
猫は本当にネズミを駆除してくれるのかどうか、についてまとめてみました。
漫画やアニメの世界ではネズミが大嫌いな猫や、ネズミに翻弄される猫のお話が人気ですが、現実の世界でも必ずしも猫がネズミにとって脅威というわけではないと言えそうです。
ネズミ駆除のために猫を飼う前に、必ずプロの駆除業者に依頼することを検討してみましょう。今回の記事のポイントとしておさえてほしいのは以下の3点です。
- 猫には狩猟本能があるものの、飼い猫はネズミ駆除を苦手とすることが多い。
- ネズミ駆除のために猫を飼育するのは、病気や費用の心配だけでなく、生き物を飼うという責任にも関わるので慎重になるべきである。
- ネズミは一気に個体数が増えるため、早めにプロの駆除業者に依頼した方がよい。
もうネズミに悩まされることなく、穏やかな毎日を過ごせますように。