コウモリは目の代わりに耳を使ってものを判別していた!

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夜になると活動を開始し、自由に飛び回るコウモリ。

その姿を見て、「夜なのに目は見えているの?」「暗い中、どうやって周囲の環境を把握しているのだろう…。」という疑問を持ったことは無いでしょうか。

その疑問の答えとして、コウモリは目の代わりに耳を使ってものを判断しているという事実があります。

では、どのようにして耳を使って判別を行っているのか。その理由と秘密を解説していきましょう。

夜行性のコウモリは目が悪い

コウモリ、特に日が暮れてから活動を開始する夜行性のコウモリには、目が悪いという特徴があります。

では、コウモリは目が悪いのに、なぜ夜の空を飛び回ることができるのでしょうか。その理由について解説していきたいと思います。

なぜコウモリには昼行性と夜行性の種類が居るのか?

夜に活動をするイメージのあるコウモリですが、実は日中に活動をする昼行性のコウモリも存在しています。まず、夜行性のコウモリと昼行性のコウモリの差について確認していきましょう。

コウモリが昼行性と夜行性に別れる理由については、さまざまな諸説があります。

その中でも有力な説であるのが、夜行性のコウモリは天敵である鳥に襲われるのを防ぎ、食料となる虫を鳥と競合しないためという説です。

天敵となる猛禽類等の鳥は、主に昼行性の者が多い傾向があります。そのため、コウモリは夜に活動をすることで鳥に襲われたり餌を取り合ったりするのを回避できているのです。

その点、昼行性のコウモリは天敵となる鳥が居ない環境で生息しているものが多く、なた食料としては果物を食べるという性質があります。ですので、襲われたり食料を競り合ったりする存在が居ません。それが、昼間に活動をしている理由だと考えられるでしょう。

このように、コウモリに夜行性と昼行性が居るのは、生きていくための条件の違い等の背景があります。そしてその生きる条件の違いが、夜行性のコウモリの目が悪いことにも関連しているのです。

夜行性のコウモリの特徴

それでは、夜行性のコウモリにはどのような特徴があるのでしょうか。

まず外見上の一番の特徴として、昼行性のコウモリと比較して、体が小さいという点が挙げられます。その姿は、あたかも小さいネズミに羽が生えて飛んでいるように見えるでしょう。

そして次に着目するべき特徴なのが、その目の小ささです。目が小さい理由は、夜行性のコウモリは視力が弱く、それに伴って退化したことが考えられます。

目は光を感知する器官であるため、光の少ない夜だとあまり役に立ちません。その点で、夜が活動時間となるのコウモリは目を使う必要が少ないため、視力が弱くなりました。そしてその視力の退化に比例して、必要性の低い目も小さくなっていったのです。

次に、行動上の特徴として、夜に捕食対象である虫を探して食べるという点が挙げられるでしょう。

捕食対象となるのは、主に蚊ほどの小さい虫です。その数は、一頭のコウモリ単体で一晩でも500匹もの数だと言われています。これだけ多くの虫を食べているため、蚊などの害虫を減らしてくれる益獣として、人間の役に立っているという側面もあります。

一方で、昼間はできるだけ活動は行いません。そのため、巣で休息をしていることがほとんどです。昼に活動をしないのは、主に外敵に襲われないようにするという理由があります。しかし、外敵の居ない環境であれば、例外的に昼間に夜行性のコウモリが活動をするというケースもあるようです。

このように、夜行性のコウモリは、外見的にも行動の面でも様々な特徴を持っています。

視力が弱いコウモリは、声と耳で物を判別している

目が小さく、視力自体もあまり無いコウモリですが、夜の暗闇の中を自由に飛び回ることができています。このような芸当を可能にしているのは、コウモリが目ではなく声と耳で物を判断しているからです。

声と耳で物を判断すると言っても、分かり辛いかもしれません。ですが、この声と耳を使った物の判別方法は、エコーロケーションという名称で科学的にも証明されています。

このエコーロケーションを理解する上で、まずはコウモリが発する声について、詳しく見ていきましょう。

コウモリが超音波を発する仕組み

コウモリが発する声は、人間の耳では聞くことができない高い周波数の音である、超音波です。この超音波を発生させる場所は、コウモリの種類によって口だったり鼻であったりするなどの違いがあります。

口から超音波を発生させる種類の場合、超音波を発生させる場所は、人間と同じ声帯です。息が喉を通り抜ける時に音が鳴り、それを声帯によって微調整することで、超音波を発生させることができます。

一方、鼻によって超音波を出す種類の場合は、鼻葉と呼ばれる鼻の周辺が、超音波を発生させるために特殊な形状になっているのが特徴です。この鼻葉で音を調整することで、超音波を作り出しています。

なお、鼻から超音波を出す種類は一部であり、声帯を震わせて口から超音波を発生させる種類のコウモリの方が多いです。

そして、コウモリは超音波を単調に出しているわけではありません。一定の周波数の超音波であるCM波と、周波数を変動させるFM波があり、この二つを組み合わせることによって、より複雑な超音波の発生を実現させているのです。

発生させる超音波の周波数は、コウモリの種類によって幅があります。全ての夜行性のコウモリの中には、120kHzほどの高い周波数を出す種類も居ますが、一般的によく見かけるアブラコウモリが出す超音波の周波数は40kHzから50kHzの範囲であると言われています。

そして次に、夜行性のコウモリの超音波を聴き取る能力と、それを利用してどのようにして周囲の物との距離を把握しているか説明します。

超音波を受け取る仕組み

まずその耳についてですが、超音波を聴き取るコウモリの耳の構造自体は、意外にも人間とそれほど大きく変わりません。しかし、音を集めやすい大きな耳をしていることや、高い周波数の音を聴く能力が高いという特性があります。

コウモリの聴覚の能力が高いのは、自らが発した超音波の反響を聞き取るためです。超音波は、周囲に物があると、それに当たって跳ね返る現象が起こります。この超音波の跳ね返りは、私たちの身近にも起こっている「こだま」「やまびこ」という現象と同じです。

反響によって跳ね返ってきた音には、実に多くの情報が含まれています。その情報は、私たち人間が目で周囲を確認しているのと同じくらいに詳細なものです。

周囲の物との距離を測りたい時は、超音波を発してから反響して返ってくるまでの時間で、その距離を導き出すことができます。

超音波を発して1秒後に反響を聞き取れた場合を仮定して、簡単に計算をしてみましょう。

空気中で音は1秒間に約340m進むという音速の公式があります。音が対象物に到達するまでに0.5秒、跳ね返って聞こえるまでに0.5秒かかっているため、公式を踏まえて約340mに0.5秒をかければ、対象物まで約170mの距離があると分かるのです。

コウモリは上記の計算をしているわけではありませんが、体感的にそれを聴力によって処理しています。そうすることで、周囲の物との距離がどのくらいなのかを、詳細に理解しているのです。

さらに、知覚する対象が動く物である場合、その動きの速度によって反響して返ってくる周波数が変わるという現象があります。これはドップラー効果と言い、身近な例では救急車が近づくに連れて、そのサイレンの音が変わる現象が有名です。

コウモリはこのドップラー効果も本能的に理解し、周波数の変化を聞き分けることによって、その動いている物の速度まで知覚しています。

そしてコウモリが聴力によって得ているのは、距離や速度のような情報だけではありません。反響の大きさによって物の大きさを理解したり、左耳と右耳での反響の時差や大きさの違いで水平方向における角度の違いを測定したりするなど、かなり幅広い情報を得ているのです。

この反響を利用した非常に高度なエコーロケーションは、明かりが無い夜に活動をする夜行性のコウモリにとって、視覚よりも役に立つ能力だったのでしょう。それゆえに、超音波を発し、聴力を高めることと引き換えに目を退化させてしまったのだと考えられます。

まとめ

今回は、夜行性のコウモリが目ではなく、耳によって周囲の状況や環境を判断していることについてまとめてみました。

夜行性のコウモリは視力が弱いため、目があまり見えていません。しかし、超音波を発生させてその反響を発達した聴覚で聞き取り、視力と同等かそれ以上に周囲の状況を知ることができます。

これが、コウモリが真っ暗な状況でも、正確に周囲を把握しながら飛ぶことができる理由です。

この記事のポイントとして押さえておいて欲しいのは、以下の3点です。

  • コウモリには昼行性と夜行性が居り、昼行性は目が見えるが、夜行性は目が悪くほとんど見えない。
  • 夜行性のコウモリは、視力の代わりに超音波と聴力を使ったエコーロケーションによって、周囲の環境を判断している。
  • エコーロケーションでは、物との距離やその動く速度、大きさ、水平方向への角度など、視覚と変わらないくらいに詳細な情報が得られる。

このような、視力の代わりとなるコウモリの特殊な耳の機能について、しっかりと覚えておいてくださいね!