ミツバチは数多くいる蜂の1種ですが、更にそのミツバチの中にも複数の種類が存在しています。
「じゃあ、ミツバチにはどれくらいの種類がいて、どんな特徴があるのか知りたい!」 「普段見かける虫は、ミツバチの1種なのかな?」
など、ミツバチの種類に関する情報について、詳しく知りたいと思われる方もおられるのではないでしょうか。
それでは、現存しているミツバチにはどれだけの種類がいて、種類によってどのような違いがあるのか。日本や海外に存在するミツバチの種類、そしてそれぞれの種類が持つ特徴や見分け方を紹介していきます。
目次
日本にいるミツバチの種類
日本に生息するミツバチには、2つの種類が存在しています。それはニホンミツバチとセイヨウミツバチです。そのため、日本国内でミツバチを見つけたら、この2つの種類のどちらかだと考えていいでしょう。
ただし、ハナアブなど、ミツバチのような小ぶりで黄色と黒の縞模様を持った、その他の虫も存在しています。そのため、ミツバチだと思っていたら、実は別の虫と見間違っていたということも多いです。
さて、それではここから、日本国内に生息するニホンミツバチとセイヨウミツバチについて、その特徴や見分け方、さらにミツバチに間違われやすい虫についても紹介していきます。
ニホンミツバチ
- 概要
ニホンミツバチはヤマトミツバチの亜種であり、大昔から日本に生息している在来種のミツバチです。
野生のミツバチとして日本の広範囲に生息している他、ハチミツの採取などの目的で、人工的に飼育されていることもあります。
- 見た目の特徴
成虫の働き蜂の大きさは12ミリ程度であり、蜂の種類の中では小ぶりで、セイヨウミツバチよりも少し小さい体つきです。
体の色は暗めであるのが特徴で、黒い色が体に多く使われています。
- 性格
基本的な性格は穏やかであり、攻撃性はかなり低いです。巣の近くに寄っ行ったとしても、人間の方からミツバチへ危害を加えなければ、襲ってくることはまずありません。
しかし、人間から攻撃をしかけてしまったり、越冬時に群れを守っている時期だったりすると、ニホンミツバチでも攻撃をしてくることがあります。そのため、性格は穏やかであるものの、近づく際には要注意です。
- 分布
本州、九州、四国に分布しています。
- 営巣場所
コンクリートや樹木の隙間、家屋の屋根裏や床下、お墓の納骨のための空間など、狭い空間に巣を構えることが多いです。
ただし例外的に木の枝など、開放的な場所にも巣を作ることがあります。
- 蜜を集める花の種類
ニホンミツバチは、四季に応じた多種多様な花から蜜を集めます。春は桜や蓮華、夏はムラサキシキブや金柑、秋はウドやサザンカ、冬は琵琶や梅が、その花の一例です。
山林に生息する花を好みますが、生息地域によっては平地に生息する草花からも蜜を採集します。
- ハチミツの特徴
蜜源となる花が複数あるため、ニホンミツバチのハチミツは様々な花の蜜が混ざり合っているのが特徴です。ハチミツの見た目はセイヨウミツバチのものに比べて濃く、味も濃厚で深みがあります。
- 飼育と野生の比率
ニホンミツバチは人工的な飼育が難しいため、飼育の数は少なめです。そのため、比率的には飼育よりも野生の群れの方がかなり多くいます。
- 飼育の目的
ニホンミツバチが作る希少なハチミツの採取、研究目的、人によってはペットとして飼育されている方もいます。
- 分蜂の特徴
ニホンミツバチの分蜂は、ある程度それが行われる時期が決まっているのが特徴です。その時期としては、暖かくなり始めた春頃に起こります。
また、このときニホンミツバチは、軒下や、木の幹・太い枝などに蜂球を作ることが多く、働き蜂は頭部を上に向けてきれいに並ぶという特徴もあります。
分蜂は自然発生するので、人為的にコントロールすることが難しいのも特徴でしょう。
- 毒性
ニホンミツバチの毒は、それほど毒性が強くはありません。そのため、毒針に刺されても腫れるだけで重症化しないケースが多いです。
しかし、蜂毒に対しての免疫が無い場合は、ニホンミツバチの弱い毒でも重症化する可能性があるので、その点には注意してください。
- その他の特徴
体温が少し高くなっても耐えられる性質は、特筆すべき特徴です。この性質によって、スズメバチを集団で囲んで蜂球を作り、高い熱を発生させることでスズメバチを殺してしまいます。
セイヨウミツバチ
- 概要
本来はヨーロッパに生息していた種類ですが、飼育しやすいという理由から、養蜂目的で日本に移入されました。
現在、日本でハチミツ作りのために飼育されているミツバチの大多数が、このセイヨウミツバチです。
- 見た目の特徴
大きさは成虫の働き蜂で13ミリ程度であり、ニホンミツバチよりも少し大きい体つきです。
体はオレンジの色をした部分が多くあり、比較的明るい色をしています。
- 性格
基本的には穏やかな性格ですが、ニホンミツバチと比べると、やや攻撃性が高い傾向です。
天敵となるスズメバチに対して単独で挑もうとするなど、1匹からでも戦闘態勢に入るケースもあります。
- 分布
起源となっているヨーロッパはもちろんのこと、その亜種が中東やアフリカ大陸などに分布しています。
それに加えて、世界各国で養蜂に利用されているため、とても幅広く分布しているのが現状です。
- 営巣場所
日本に生息するセイヨウミツバチは、自然の中に営巣することはまずありません。そのため、基本的に人工の養蜂箱の中で営巣します。
- 蜜を集める花の種類
セイヨウミツバチが好む、蜜を集める花の一例としては、蓮華、アカシアが有名です。また、環境によって、近くにある好みの花の蜜を集めます。
蜜を集めに複数の花を訪れることは少なく、1度対象とした花へ、その花が枯れるまで集中的に蜜を集めに行くという性質があるのも特徴です。
- ハチミツの特徴
単一の種類の花から蜜を集めるため、その蜜源となった花の特徴がハチミツへとダイレクトに反映されます。
蓮華やアカシアなど、それほど癖の無い草花の蜜を採取するため、見た目や味もあっさりとしているのが特徴です。
- 飼育と野生の比率
日本におけるセイヨウミツバチは、飼育環境下でしか生息することができません。これは自然界にセイヨウミツバチの天敵として、スズメバチが生息しているからです。セイヨウミツバチが移入された際、野生化による環境への影響が危惧されたこともありますが、実際にはほとんど野生化できませんでした。
- 飼育の目的
主な目的としては、商業的なハチミツの採取のために飼育されています。
その他、ペットとして飼育されている場合や、研究やセイヨウミツバチの毒を使った治療への使用が目的で飼われている場合もあります。
- 分蜂の特徴
働き蜂の個体数が増えてくれば、特に決まった時期もなく分蜂します。
セイヨウミツバチの場合は、細い枝に分蜂球を作る傾向があり、しばしば葉を巻き込んでいることもあります。
- 毒性について
スズメバチやアシナガバチに比べると毒性は強くありません。しかし、ニホンミツバチと比較すると、その毒性は強いので注意が必要です。
この毒性の強さを利用して、蜂毒療法などに利用されるケースもあります。
- その他の特徴
セイヨウミツバチはハチミツを作る能力が高く、年に3回から4回のハチミツ採取のタイミングがあります。このような点が、ハチミツ作りにセイヨウミツバチが好まれている理由の1つです。
ニホンミツバチとセイヨウミツバチの見分け方
ニホンミツバチとセイヨウミツバチは、よく見ると外見から両者の違いを判断できるポイントが幾つかあります。
「普段の生活で出会ったミツバチが、どちらの種類なのか判別したい!」そう考えている方は、以下に挙げるポイントをチェックしてください。
【体の色】
セイヨウミツバチは、体の色の中でオレンジの割合が多いです。その点、ニホンミツバチは黒の割合が多い特徴があります。オレンジ系で明るい体の色ならばセイヨウミツバチ、黒っぽく暗い色ならニホンミツバチと見分けられるでしょう。
しかし、ニホンミツバチは8〜10月ころに、黄色の面積が多い働き蜂が出現する傾向があることが分かっており、この時期はニホンミツバチに詳しい人でも、ひと目見ただけではセイヨウミツバチと見分けられないこともあります。また、この体色の変化は、蛹の期間の温度が関係していることも分かっています。
【生息している環境の違い】
セイヨウミツバチは日本の自然界では生きられないので、養蜂されているところでしか生息していません。また、セイヨウミツバチの飛行範囲は亜種によっても違いますが、巣から半径3〜6kmが上限とされているので、その範囲にセイヨウミツバチを飼育している場所があれば、見かけたミツバチはセイヨウミツバチの可能性もあります。
一方、在来種であるニホンミツバチは、野生と飼育されているものの両方がいます。もし、ミツバチを見つけた場所から半径6km以内にセイヨウミツバチを飼育しているところがなければ、それは在来種であるニホンミツバチであると判断できるでしょう。
【後翅の翅脈の形状】
ニホンミツバチとセイヨウミツバチは、後翅の翅脈(翅に模様のように入っている筋のこと)の形状が違います。これはミツバチを捕獲し、虫眼鏡や顕微鏡を使っての確認が必要ですが、判断方法としては確実なものです。
ニホンミツバチの後翅の翅脈の場合、その一部がアルファベットのH状に形成されています。その点、セイヨウミツバチの同じ翅脈の部分は、小文字のhやYに似た形です。
以上のポイントが、ニホンミツバチとセイヨウミツバチを見分ける際に確認するべき部分です。
よくミツバチと間違われる昆虫
ミツバチかと思っていたら、実はミツバチではなく他の昆虫だったというケースも少なくありません。実際に、ミツバチに良く似た昆虫が存在しているからです。
誤ってミツバチだと認識してしまわないように、よくミツバチと間違われやすい虫の名称と、的確に見分ける方法についてもお伝えします。
- マルハナバチ
マルハナバチは、分類的に見てもミツバチに近い蜂の仲間です。そのため、見た目もミツバチに似ています。
しかし、その外見をミツバチと比較すると、体は大きく、その体を覆う毛も長くてふさふさとしています。それに、体の色も黒がベースとなっており、その上に鮮やかなオレンジ色や白色の体毛があるのも特徴です。
- スズメバチ・アシナガバチ
メジャーな蜂の種類である、スズメバチやアシナガバチも、よくミツバチと間違えられる蜂の仲間です。
スズメバチの場合、その体長は、人間の生活圏でもよく出現するキイロスズメバチの成虫で17mm以上あります。そのため、ミツバチに比べてかなり大きいです。
アシナガバチの場合は、細長い体をしており、長い足を垂らしたようにして飛行します。ミツバチの足は短いので、足の長さに着目すれば区別することは簡単です。
- アブ
アブはハエの仲間であり、形状がミツバチによく似ているものの、黒っぽい色のものが多く、ミツバチのような黄色と黒の鮮やかな体の色をしていない種類が多いです。(アカウシアブのように、一部、蜂のような体の色や模様を持つアブの種類も存在しています。)
また、飛行する際には足を閉じた状態で素早く移動するため、飛行のスタイルを確認することでも、アブとミツバチを見分けることができます。
- カミキリムシ
カミキリムシの中で、トラフカミキリという種類は黄色と黒の鮮やかな縞模様をしています。一目見ただけだと、蜂の一種だと見間違うほどです。
ミツバチとの大きな違いは、体の外に出た翅が無いという点が挙げられます。それに、体の黄色と黒の縞模様が波状であり、ミツバチのものと比べていびつなのも区別しやすいポイントです。
- スカシバガ
スカシバガは蛾の仲間ですが、スズメバチに擬態することによって身を守っているため、ミツバチに間違われることも多いです。
ミツバチと比較すると、体長が20mmを超えるものが多いため、その大きさで区別をすることができます。擬態の完成度は高いため、ミツバチだけではなく他の蜂の仲間と勘違いする可能性はかなり高いです。
日本以外に生息するミツバチの種類
日本国内において生息するミツバチは2種類ですが、日本以外に目を向けて見ると、世界には全部で9種類のミツバチが生息しています。
それでは、世界に生息するミツバチについて、ニホンミツバチとセイヨウミツバチ以外の7種類を紹介していきましょう。
コミツバチ
小柄なミツバチの中でも、比較的小さい種類であるのがコミツバチです。高温への耐性を持っており、50度にもなる環境でも生息できる能力を持っています。
コミツバチはイランやパキスタンの一部を含む西南アジアから、インドネシア半島等を含む東南アジアまで広く分布しています。
クロコミツバチ
コミツバチ属に含まれるもう1つの種類であるのが、クロコミツバチです。コミツバチよりもさらに体は小さく、世界で最小のミツバチとして知られています。
分布地は東南アジアが中心であり、その生息範囲はコミツバチよりも狭いです。
オオミツバチ
オオミツバチは、スズメバチと同等の高い攻撃性があることが知られています。また、外見上の特徴として、お腹の部分が明るい黄色であるということも特筆すべき部分です。
分布地は西南アジアから東南アジアまで、コミツバチと似て広い範囲で生息しています。
ヒマラヤオオミツバチ
ヒマラヤオオミツバチは、オオミツバチの1種です。見た目もよく似ていますが、お腹の末端はオオミツバチとは違って黒と灰色をしていることや、体全体が褐色をしているという違いがあります。
分布地はヒマラヤ山脈の標高が高い地域であり、かなり限定的です。主に標高2,000m程度の場所で営巣をします。
サバミツバチ
サバミツバチの分布地は、マレー半島からカリマンタン島にかけてです。
体の色は、他のミツバチに比べて濃い赤い色をしているため、レッド・ビーという別名もあります。性格的には、とても穏やかであるのが特徴です。
キナバルヤマミツバチ
カリマンタン島に分布し、特にキナバル山付近の高い標高の場所で生息しているのが、キナバルヤマミツバチです。生息地域が限られているため、幻のミツバチとも呼ばれています。
キナバルヤマミツバチの特徴は、攻撃的な性格をしていることや、気温の低い高地で体温を維持するために、体毛が長いという点などです。
クロオビミツバチ
クロオビミツバチは、インドネシア中部に位置するスラウェシ島に分布しています。
ニホンミツバチも含まれるトウヨウミツバチ群やサバミツバチに近いとされていましたが、1999年に別の種類であることが認定された蜂です。ただし、その生態の詳細については十分解明されておらず、研究途中の段階となっています。
まとめ
ミツバチは単一の種類ではなく、日本国内では2種類、世界規模で見ると9種類に分類されることが分かりました。さらに、その他の昆虫の中で、ミツバチと見分けがつきにくい虫も多くいます。
それゆえに、ミツバチを見分けるためにはよく観察をして特徴を捉え、要点を押さえた判別方法を行う必要があるでしょう。
それでは、この記事のポイントとして押さえておいて欲しいのは以下の3点です。
- 日本国内に生息するミツバチは、ニホンミツバチかセイヨウミツバチのどちらかである。
- ミツバチに似た虫として、スズメバチやアシナガバチなど危険な種類の蜂や、全く別の系統の昆虫がいるため、見極めには注意が必要である。
- 日本以外に生息するミツバチ以外に7種類のミツバチが現存しており、東南アジアから西南アジアの地域の範囲内に分布している。
以上のポイントを押さえて、ミツバチを見分ける際には、間違わないように注意して行ってくださいね!