ミツバチは身近な蜂の1種であるため、普段の生活の中でミツバチに遭遇した経験のある方も多いと思います。しかし、ミツバチを近くで見かけた時
「刺される心配はないのかな・・・」
という不安が頭を過ぎりませんか?
ミツバチは大人しい性格ですが、場合によってはまれに人を刺す可能性があります。
ですので、ミツバチについて正しい知識を得て、刺されないような対応を行っていくことが必要です。
上手くミツバチと共生するためにこの記事では、ミツバチの攻撃に関する特性、刺された時に出る症状や刺されないための予防法、そして巣やミツバチの群を見つけた時の的確な対応法などについてお伝えしたいと思います。
目次
ミツバチも人を刺すことがあるの?
一般的にあまり人を刺すことのないミツバチでも、人を刺すことはあります。
ミツバチの群の中で、人を刺すことができるのは、メスの蜂である女王蜂と働き蜂の2種に限られます。これはミツバチの毒針が、メスだけが持つ産卵管が変化したものだからです。
そのため、オス蜂には毒針がないので、刺すことができません。
メス蜂のうち、特に人を刺す可能性が高いのは働き蜂です。
なぜなら女王蜂は、一生の大部分を巣の中で過ごすため、人と遭遇する機会があまりありません。
また、女王蜂は群の中で唯一、産卵の役割を担っています。その女王蜂が敵と対峙し、万が一いなくなってしまうと、群が成り立たなくなってしまうのです。
それに対し働き蜂は巣の外に出ることも多く、人と接する機会が多々あります。
さらに働き蜂には、巣を守るという役割があるので、必然的に人を刺す可能性が高くなります。
それでも、基本的にミツバチは大人しく、攻撃性も低いので、積極的に人間を襲うということは滅多にありません。
しかし、ミツバチの攻撃性が高まっている状態の時や、ミツバチが嫌がる行動を取った時などは、刺される危険性が高まってしまうので注意が必要です。
では、具体的にどのような時にミツバチは人を刺すことがあるのでしょうか。
ミツバチが人を刺す条件や、それを踏まえた上で取れる、刺されないための対策について見ていきましょう。
大人しいミツバチ。注意が必要なのはこんな時!
ミツバチは平常時であれば、大人しい性格をしており、人を襲うことはまずありません。
巣を近くで観察するだけなら刺されることは少ないですし、ハチミツを採取する養蜂家の中には、防護服を付けずに巣の中に手を入れる方もいるほどです。
スズメバチやアシナガバチであれば、時期によっては、巣に近づくだけでも警戒してすぐに攻撃をしかけてきます。
それと比較しても、ミツバチは蜂の中ではかなり安全性が高いと言えるでしょう。
しかしそんなミツバチでも、攻撃性が高くなった場合は人を刺す危険性が高まります。ですので、そのようなミツバチは近づいたり触ったりしないことが重要です。
ミツバチの攻撃性が高くなる条件としては、主に以下のような場合が挙げられます。
- 群の中にいる女王蜂に異変が生じている時
女王蜂はミツバチの群の中心的存在です。
ですので、女王蜂に異常が起こった際は、群の一大事であるため、ミツバチでも非常にピリピリしており攻撃性が高い状態になります。
- ハチミツや花粉などの餌が不足している時期
ハチミツやその他の餌は、ミツバチにとって生活をしていく上での重要な資源です。
それが不足した状態だと、必死にハチミツなどの餌を守ろうとしますので、攻撃的になって外敵を寄せ付けなくなります。
- 気温が低くなった時
ミツバチは寒さに弱いので、気温が低くなると(10度以下)女王蜂を寒さから守るため、働き蜂の多くが巣の中から出てこなくなり、巣を温めるようになります。
このような状態の時も、ミツバチはとても攻撃的となっているので危険です。
- ミツバチやミツバチの巣を攻撃して警報フェロモンを付けられた時
ミツバチやその巣に攻撃などをすると、ミツバチはその人を危険な敵だと判断します。すると、働き蜂が毒針を使って攻撃をしかけ、同時に警報フェロモンという物質を出します。
そのフェロモンが付着すると、他の働き蜂からも敵と見なされるため、他の働き蜂からも攻撃される危険性が高まります。
以上のような状態の時は、大人しいミツバチでも容赦なく人間を襲う場合があります。
ミツバチに刺されないためには、ミツバチの攻撃性が高くなっていないか、上記のポイントを見極めましょう。また、必要がなければ、巣には極力近づかないようにしましょう。
ミツバチからの「近づかないで」のサイン。ミツバチの威嚇行為
ミツバチの攻撃性が高まっている時やこれから攻撃をしかけるという時は、いきなり刺してくるのではなく、威嚇行為によって「近づかないで!」と警告を出していることが多いです。
その主な威嚇行為としては、
- 頭からぶつかってくる
- 集団になってお尻を何度も振る
- ブンブンと羽の音を鳴らす
といったものがあります。
遭遇したミツバチに、上記のような威嚇行為をされた場合は、刺されないように注意しておきましょう。
そして、もしもミツバチに威嚇行為をされてしまった場合、適切な回避行動をとる必要があります。その回避行動のポイントは、ミツバチを刺激せず、逃げて距離を取るということです。
ミツバチを追い払う行為や攻撃をして刺激を与えると、かえって敵と強く認識されてしまうので、襲われる可能性がより高くなります。そのため、刺激を与えないことが重要です。
そして、一般的なミツバチは400m以上は追いかけてこないと言われています。ですので、それ以上の距離を逃げ切ることができれば、ミツバチから刺されることを回避できるでしょう。
ミツバチに刺されないためにできること
ミツバチに刺される被害を防ぐためには、あらかじめ刺されないような対策や予防を行っておくことが大切です。その対策や予防方法をご紹介いたします。
- 巣に近づいたり攻撃をしたりしない
ミツバチは攻撃的であったとしても、無差別に人を襲うわけではありません。
そのため巣を見かけても、無闇に近づいたり攻撃をしたりしなければ、ミツバチが刺してくることはありません。
- 屋外にジュース等の水分を放置しない
ミツバチにとって、水分は群を維持するために必要です。そのため、外に水分があると、それに寄ってくることがあります。
特にジュースは、その香りも蜂を引き寄せやすいため、中身が入ったままの空き缶やペットボトルを放置しないことも対策の1つです。
- 忌避剤や殺虫剤を使用して巣作りを予防する
自宅のまわりでミツバチが巣を作りやすい場所を見つけ、そこにミツバチが嫌がる忌避剤や殺虫剤を使用しておけば、巣を作られることを防げます。
巣が近くにあると、刺される可能性は高くなるので、巣が作られないようにすることは重要なポイントです。
- ミツバチが反応する強い香りがするものを避ける
蜂は香りに敏感であるため、先述したジュースの香りだけではなく、果物や匂いの強い香水、香料の強い柔軟剤等にも反応しやすいです。
ミツバチを刺激しないためには、これらの強い香りがしない服装や日用品の選択を心がけましょう。
以上の対策を行えば、ミツバチが人間を襲う可能性を大幅に低くすることができます。
ミツバチにも毒があるの?刺されたらどうなる?
ミツバチにも毒があります。
ですので、もしも毒針に刺されてしまうと、体内に入った毒によってアレルギー反応が起こり、命を落とす危険性があることにも注意が必要です。
【ミツバチに刺されて起こる症状】
ミツバチの毒針に刺されて起こる症状は、局所症状と全身症状に分かれます。
局所症状は刺された部位に限定して起こるものであり、
- 腫れ
- 痒み
- 強い痛み
この3つが、主に起こる症状です。
一方、全身症状は刺された部位以外に起こる症状であり、その主な例としては
- 発疹
- 全身が痒くなる
- 吐き気がする
- 呼吸困難に陥る
- 意識を失うなど意識障害が起こる
- 血圧低下を引き起こす
等が挙げられます。
また、全身症状が出るということは、それだけ体が重篤なアレルギー反応を起こしていることの証明です。このような場合、アナフィラキシーショックを起こして、死亡する可能性も高くなります。
ミツバチの毒はスズメバチやアシナガバチの毒に比べて弱いですが、それでも蜂に刺された回数や体質によっては、アナフィラキシーショックが起こる可能性は少なからずあるため、注意しておいてください。
【ミツバチに刺された時の対処法】
ミツバチに刺されてしまい、体に毒による反応が現れた時は、その状態に応じた対処を行う必要があります。
刺された部位だけに反応が出る、局所症状だけであれば、患部を清潔にした状態で抗ヒスタミンやステロイドの成分が入った軟膏を塗りましょう。そうすることで、症状を軽減できます。
一方、全身症状が出たりアナフィラキシーショックの状態に陥ったりした場合は、医療機関でアドレナリン等の成分を注射してもらうことが1番の対処法です。
ですので、もしも全身に何らかの異変を感じれば、すぐに医療機関に行くようにしましょう。この時、救急車を呼ぶのも1つの手段です。
また、エピペンというアドレナリンを自己注射できるセットの使用は、ミツバチに刺された時の応急処置の場面でとても役に立ちます。
1度ミツバチやその他の蜂に刺された経験のある方は、次回刺されるとより強くアレルギー反応が出るので、このエピペンを所持しておくことをお勧めします。
蜂に刺されて、病院に行くか迷った時や薬選びで困った時のための記事も用意していますので、よければ参考にしてくださいね!
蜂に刺されたけど病院にいくべきか迷う…。
→『ハチに刺された!病院に行くべき症状とは?病院へ行くか迷ったときに』
蜂に刺された時に使える薬を知りたい!
→『痛いハチ刺されに!間違ってない?正しい応急処置と薬』
刺した後のミツバチは…
一般的にもよく知られていますが、ミツバチは1度毒針を刺すと死んでしまいます。そしてその原因は、ミツバチの毒針の構造にあります。
ミツバチの毒針にはしっかりとした返しがついており、皮膚に刺すと、その返しによってなかなか抜くことができません。
さらに、毒針には毒が入った袋(毒嚢)と内臓がくっついているため、1度毒針を刺すと内臓ごと失ってしまのです。
内臓がなくなると生命を維持できなくなるため、ミツバチは1度毒針で人などを刺すと、その多くが生き絶えてしまいます。
なお、スズメバチやアシナガバチの毒針にも、ノコギリ歯のような返しが見受けられますが、ミツバチほど顕著なものではありません。
この毒針の構造上の違いから、スズメバチやアシナガバチは毒針をスムーズに抜くことができるため、ミツバチと違って何度でも人を刺せます。
ミツバチの群や巣を見つけたら
もしも身近でミツバチが大群でいたり巣を作っていたりすれば、不安になってしまいますよね。
ミツバチは駆除が必要なケースと、必要ではないケースがあるため、十分に検討した上で対処をする必要があります。
特に、ミツバチはハチミツを作るだけでなく、生態系を保持する上で重要な役割を占めている動物なので、できるだけ駆除をしないことが理想的です。
では、ミツバチの群や巣を見つけた時の対応策について、より具体的な方法をご紹介していきます。
駆除は必要?
ミツバチを見かけたら、すぐに駆除をするのではなく、駆除が本当に必要かどうかを見極めてから行うようにしてください。
そして、駆除の要否を判断するポイントは、巣が作られている場所が人間の生活圏に近いかどうかです。
家の中に巣が作られていたり、生活圏の中で頻繁にミツバチが飛び回ったりするような場合等は、刺される危険性が高くなるので駆除の必要性が出てきます。
しかし屋内や、生活圏の付近に作られた巣ではない場合や、次の項目でも述べる分蜂と呼ばれる新しい巣作りの準備段階で群になっている場合等は、駆除をする必要がないことがほとんどです。
以上のように、ミツバチを見かけても、それが日常生活の中でどれだけ支障を来す距離にいるのかを確かめた上で、駆除をするか否かを決定するようにしましょう。
分蜂〜ミツバチの引っ越し〜
ミツバチの駆除をしない方が良いケースの代表的な例として、ミツバチが分蜂を行っている時が挙げられます。
分蜂は、新女王蜂の群に巣を譲った旧女王蜂が、半分ほどの働き蜂を引き連れて別の巣を作ることです。
この分蜂の途中で、大勢の蜂が木の下などに群がることがあり、この大群を見て「新しく巣ができた!」と勘違いされるケースが多くあります。
しかし、これは一時待機中であり、すぐに移動するので駆除は不要です。ミツバチを刺激しなければ刺されることもありませんので、そっと見守りましょう。
ただし、分蜂の一時待機をしている場合、小さい箱などの巣作りに適した環境が近くにあると、そこに巣を作られる可能性が高くなります。
なので、分蜂の一時待機を見かけたら、巣を作られそうな物を片付けてミツバチの動きをよく観察するようにしましょう。
ミツバチを回収してもらえることもある
ミツバチの巣を駆除する必要がある場合、その駆除方法としてお勧めしたいのが、ミツバチの回収です。
近くにいる養蜂家、都市部で行われているミツバチプロジェクトなどに依頼をすれば、ミツバチを生きたまま回収してくれることがあります。
養蜂家やミツバチプロジェクトの駆除は、ミツバチを生きたまま捕獲してくれるのが特徴です。殺虫剤でミツバチを殺虫しなくても良いので、ミツバチにも環境にも優しい画期的な方法となります。
ミツバチの回収については、直接、近くの養蜂業やミツバチプロジェクトをの担当者に連絡をしみると良いでしょう。
また、自治体の環境保全窓口や保健所などが、地元養蜂家等にとミツバチを回収してもらう際の窓口になっていることもあるので、相談に行ってみてください。
益虫としてのミツバチ
あまり積極的にミツバチを駆除しない方が良いのは、ミツバチが人間にも環境にも利益を与えてくれる益虫だからです。
その益虫としての主な役割としては、ハチミツやローヤルゼリー、蜜蝋(みつろう)の生産、そして植物の受粉を媒介などが挙げられます。
私たちが普段口にするハチミツやローヤルゼリーは、ミツバチによって生産されているものです。それに、ロウソクや化粧品などに使われる蜜蝋も、ミツバチが生産したものを使っています。
そしてそれ以上に特に重要なのが、後者の植物の受粉をするという役割です。
ミツバチはハチミツを採取する際に、体に花粉をつけて花と花を移動します。この間に、体についた花粉を花につけ受粉させているのです。
もしもミツバチがいなくなれば、植物の受粉の媒介者がいなくなるので、植物が次の子孫を残せなくなります。そうなると、植物が減少して自然環境に大きなダメージを与えることなってしまいます。
このように、ミツバチはハチミツなどの生産だけでなく、自然環境を維持するためにも欠かすことができない益虫なのです。私たちは、なるべくミツバチと共生できる道を選んでいかなければなりません。
まとめ
ミツバチはその毒針に毒を持っているため、刺されて重篤なアレルギーを起こさないように注意しなければなりません。
しかし、基本的にはイメージ通り穏やかな性格をしているので、ミツバチの攻撃性が高まっている時に刺されるような行為を取らなければ、私たち人間に危害を加えることは少ないでしょう。
そして人間社会や自然にとって有益なミツバチと、上手く共存していくことが理想的です。
それでは、この記事のポイントとして以下の3点を押さえていただきたいと思います。
- ミツバチは毒を持っており、人間が刺されるとアナフィラキシーショックを起こす可能性がある。
- 気温が低い時、女王蜂に異変がある時等はミツバチは攻撃的なので、近づかない。
- ミツバチは優秀な益虫なので、生活に支障を来さないのであれば無闇に駆除をしない。
これらのポイントを押さえて、ミツバチを見かけたり、ミツバチの群に遭遇したりしたとしても、焦らずに正しい対処を行ってくださいね!