身近でハチのような虫を見かけたら、
「これは何ていう名前の虫?」
「ハチに似てるようだけど、刺されることはある?毒は強い?」
などの疑問が浮かびますよね。
じつは、ハチにはなんと、世界に10万種の仲間がいるのです!びっくりですよね!
この記事では、意外と知らないハチの仲間や、そのハチの仲間の気になる攻撃能力について説明していきます!
目次
ハチの種類について知ろう!
世界に10万種いるとされるハチの仲間。日本にいるだけでも4500種を超えるとされていて、まだまだ研究が続けられています。
ハチというと、
「刺されると痛くて、場合によっては命を落とすこともあるんでしょ…。」
のように、『ハチ=危険』というイメージを持たれがちです。
しかしじっさいは、人が刺されたり、刺されたことで危険が及んだりするハチは、ほんのわずかな数しかいません。
ここからは、意外と知らないハチの仲間についての分類と、ハチ全般の危険性について、紹介していきます。
ハチってどんな虫のこと?〜ハチの仲間〜
まずは、『ハチとはどんな虫か』について説明したいと思います。
ここでは、昆虫のうち『ハチ目』というグループに分けられる虫を『ハチの仲間』として紹介するので、頭の片隅に置いておいてくださいね。
さて、ハチ目に含まれるハチの仲間のもっとも大きな特徴は、丈夫で透明な膜状の4枚の翅がある、ということです。この特徴から、膜翅目(まくしもく)と呼ばれることもあります。
「あれ?」と思った方もいるかも知れませんが、ハチの仲間とは、黄色と黒のシマ模様がある・毒針がある、といったグループではないのです。
ハチ目はさらに、体にくびれがあるかないかで、つぎの2つのグループに分けられます。
- ハバチ亜目(別名:広腰亜目(こうようあもく))
- ハチ亜目(別名:細腰亜目(さいようあもく))
別名が示すように、体にくびれがないのがハバチ亜目、くびれがあるのがハチ亜目です。
ハチ亜目は、さらにメスの産卵管の形状や機能などの違いによって、
- 有錐類(ゆうすいるい)
- 有剣類(ゆうけんるい)
の2つのグループに分けられます。
ここまでのハチの仲間のグループ分けと、おもな特徴をまとめると、つぎの表1のようになります。
表1
ハチ目 | ハバチ亜目 | ・体にくびれがない
・産卵管は、植物に切れ込みを入れたり、穴を空けたりするのに適した構造になっている ・ほかの動物や人を攻撃するための毒はない ・群を作らない |
||||||
ハチ亜目 | 有錐類 | ・体にくびれがある
・産卵管は、より産卵に適するように機能が発達していることがある |
||||||
有剣類 | ・体にくびれがある
・産卵管が針のように鋭く変化していて、攻撃や毒注入のために、針を使う ・群を作る=社会性を持つ種類がいる |
さらに細かい分類や特徴については、のちほどもう少し詳しく紹介します。
ハチの仲間のグループ分けについて知ったところで、つぎは刺すハチと刺さないハチの違いを見てみましょう!
ハチの仲間はみんな人を刺すの?
『ハチ=人などを刺す虫』ではありません。
さきほどのハチの仲間についてグループ分けした表1に沿って、それぞれのグループのハチについて、刺される危険があるか・毒は強いか、などを見てみましょう。
【ハバチ亜目】
ハバチ亜目に含まれるハチは、植物に卵を産みつけるために産卵管を使います。
つまり、ほかの動物を刺すために産卵管を使うことはないので、人が刺されることももちろんありません。また、人に影響をもたらすような毒も持っていません。
【ハチ亜目・有錐類】
体にくびれがあるハチ亜目のうち有錐類は、ほかの昆虫やクモの卵や体に、自分たちの卵を産みつけます。
そのため有錐類のハチは、標的となる昆虫などにより穴を空けやすいように、産卵管がキリのような形になっているなど、機能が発達しているのが特徴です。
有錐類のハチは、人がつかもうとすると、産卵管を使って刺そうとしてきます。
しかし産卵管がそれほど丈夫ではないので、刺さらないか、刺さっても、ちくりとする程度です。
【ハチ亜目・有剣類】
ハチ亜目のうち有剣類は、ほかのハチの仲間と違い、産卵管が針のように鋭く変化しているのが特徴です。
有剣類のハチは、自分たちの幼虫のエサにする昆虫などを麻痺させたり、群を守るために外敵を攻撃したりするのに、毒針を使用するのです。
毒の強さは、ハチの種ごとに毒をどんな目的で使うかによって異なります。
ほとんどのハチは、自分たちの幼虫のエサを捕獲するために毒を使用するため、毒性は低くなっています。
このような有剣類のハチは、人の方から手を出さなければ、刺されることはありません。また、刺されたとしても毒が弱いので、とくに問題になりません。
しかし有剣類のハチの中には、ほんの一部ですが、ハチ刺されが問題になる種も存在します。
その種とは、群で生活し、群を守るために外敵への攻撃に毒針を使用する種のハチです。このようなハチは、外敵と戦うために、ハチの中では強い毒を持っているのです。
したがって、群を守るために外敵と戦う種のハチには、刺されないように注意する必要があります。
日本で、そのような敵と戦う習性があり、とくに注意が必要なのは、
- スズメバチ
- アシナガバチ
- ミツバチ
- マルハナバチ
の4つのグループのハチです。
つぎでは、この4つのハチのグループについて、それぞれ特徴などを説明していきます。
この4つのグループ以外のハチの仲間については、そのあとの『ほかのハチの仲間についても知りたい!グループごとの特徴』で紹介しています!
刺されないように注意が必要な、4つのグループのハチ
ここからは、日本で人が刺される被害の多い4つのハチのグループ(スズメバチ・アシナガバチ・ミツバチ・マルハナバチ)について、グループごとの特徴や含まれる種、見かけたときの対応の仕方などを紹介します。
ここでは、『危険性=攻撃性の高さ+毒の強さ』で考え、注意が必要な順に紹介していきますね。
スズメバチ【必要な注意:大】
さきほどハチの仲間のグループ分けについて紹介しましたが、それぞれのグループは、ハチの体の特徴などによって、さらにいくつものグループに分けられます。
覚える必要はありませんが、参考までに書いておくと、スズメバチとは
ハチ亜目・有剣類・スズメバチ上科・スズメバチ科・スズメバチ亜科
というグループのハチを指し、日本にはつぎの17種がいます。(「・」は「の中の」と読み換えてもらうと、しっくりくると思います。)
- オオスズメバチ
- キイロスズメバチ
- モンスズメバチ
- ツマアカスズメバチ
- チャイロスズメバチ
- ツマグロスズメバチ
- コガタスズメバチ
- ヒメスズメバチ
- クロスズメバチ
- シダクロスズメバチ
- キオビクロスズメバチ
- ツヤクロスズメバチ
- ヤドリスズメバチ
- キオビホオナガスズメバチ
- シロオビホオナガスズメバチ
- ニッポンホオナガスズメバチ
- ヤドリホオナガスズメバチ
これらスズメバチの特徴は、腹部のくびれ側の縁が、直線的であることです。体長が2 cmを超える大型のハチが多く含まれます。
スズメバチは巣を守ろうとする本能がとても強く、人が巣に近づいただけでも刺されることがある上に、持っている毒も強く、刺されると激しい痛みが生じます。
民家やその周辺に巣を作る種もいるため、もしも、家のまわりでスズメバチの巣を見つけたら、駆除の検討が必要です。
スズメバチの巣の駆除について知りたい方は、こちらのページも合わせて見てみてくださいね。
アシナガバチ【必要な注意:中】
これも覚える必要はありませんが、アシナガバチは、
ハチ亜目・有剣類・スズメバチ上科・スズメバチ科・アシナガバチ亜科
というグループのハチです。日本には、11種がいると考えられています。
- セグロアシナガバチ
- フタモンアシナガバチ
- トガリフタモンアシナガバチ
- キアシナガバチ
- コアシナガバチ
- キボシアシナガバチ
- ヤマトアシナガバチ
- ナンヨウチビアシナガバチ
- オキナワチビアシナガバチ
- ヒメホソアシナガバチ
- ムモンホソアシナガバチ
アシナガバチの種についてもっと詳しく知りたい場合は、こちらの記事で紹介していますので、覗いてみてくださいね。
スズメバチとグループの名前を比べてみると分かるように、アシナガバチはスズメバチととても似ているハチです。
アシナガバチの特徴は、腹部のくびれ側の縁が、細くなっていることです。上のフタモンアシナガバチの写真と、さきほどのオオスズメバチの写真を見比べてみてくださいね。
体長が2 cm以下の中型〜小型のハチが、アシナガバチ亜科には多く含まれています。
アシナガバチは基本的におとなしく、スズメバチに比べると攻撃性は低いものの、やはり巣を攻撃する敵に対しては攻撃を仕掛けます。
やっかいなことに、アシナガバチは民家の周囲に営巣することも多く、庭作業の最中に気づかないうちに巣を揺らしてしまうなどして、刺されてしまう人が多くいるのです。
大人の手が届かない場所のアシナガバチの巣は、とくに問題のない場合が多いです。
一方、出入りが多い玄関脇やベランダ、人通りが多い道に面した生け垣などにアシナガバチが巣を作ってしまった場合は、駆除したほうがよいでしょう。
見つけたアシナガバチの巣を駆除する必要があるかどうかを知りたいあなたには、こちらの記事もオススメです!
スズメバチとアシナガバチの見分け方
スズメバチとアシナガバチはとてもよく似ています。
腹部の形に違いはありますが、スズメバチの危険性を考えると、いくら観察のためといっても、できれば近づきたくありませんよね。
ですが、遠くからでもスズメバチとアシナガバチを見分けることはできますので、ご安心ください!
スズメバチとアシナガバチをカンタンに見分けるポイントは、つぎの2点です。
【飛び方】
アシナガバチは後ろ脚を垂らして飛ぶ
スズメバチとアシナガバチを見分けるポイントの1つめは、飛び方です。
飛んでいるハチを見て、脚が垂れ下がっているのが確認できたら、そのハチはアシナガバチです。上の写真のような格好で飛んでいます。
スズメバチの場合は、アシナガバチのように飛行中に垂れ下がった脚を確認することはできません。
【巣の形】
スズメバチの巣には外被があり、アシナガバチの巣には外被がない
巣の形からも、スズメバチとアシナガバチをカンタンに見分けられます。
スズメバチの巣には、幼虫を育てる巣房(六角形の小部屋)を覆う外被があります。
『ハチの巣』と聞くと、マーブル模様を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?そのマーブル模様をしているのこそが外被です。
スズメバチの巣であれば、作り始めの巣にも小さな傘のような外被がついていますので、見落とさないようによく観察してみましょう!(あくまで遠くからですよ!)
一方、アシナガバチの巣には、スズメバチの巣のような外被はありません。
シャワーヘッドのような形をしていて、巣穴がむき出しになっています。
家に巣が作られてしまっている場合、スズメバチの巣とアシナガバチの巣では危険性や駆除の必要性に違いがあります。
ですので、この2つのポイントを確認して、適切な対応を取るようにしてくださいね。
また、スズメバチもアシナガバチも、外敵への攻撃は巣の防御がおもな目的です。
したがって、単独で飛んでいるスズメバチやアシナガバチに刺されることは、ほとんどありません。
しかし、
- スズメバチやアシナガバチの接近や羽音などに驚いて、振り払おうとする
- ハチのフェロモンに似た匂いの、香水や柔軟剤を使った服を身につけている
といった場合、ハチを刺激し、ハチから攻撃されてしまうことがあります。
ですので、近所などでハチを見かけるときは、行動や身につけるものには注意しましょう。
ミツバチ【必要な注意:小】
スズメバチ・アシナガバチに比べると、ころっとした体型のミツバチは、
ハチ目・有剣類・ミツバチ上科・ミツバチ科・ミツバチ亜科・ミツバチ属・ミツバチ亜属
というグループに入れられるハチです。日本には、
- ニホンミツバチ
- セイヨウミツバチ
の2種が生息しています。
ミツバチの種類について、より詳しく知りたい方は、こちらの記事も合わせて読んでみてくださいね。
ミツバチは、その名前にも関係しているように、花の蜜を集めてハチミツに加工し、巣に蓄えます。
ミツバチは、いずれの種も女王蜂を中心とした群で生活し、群全体で冬を越すことができます。
(日本では、スズメバチやアシナガバチ、このあと紹介するマルハナバチは、その年に産まれた女王蜂しか冬を越せません。)
ミツバチはとてもおとなしく、人が刺されることは滅多にありません。
ただし、
- 女王蜂に異常が生じている
- 冬でエサが少ない
などの場合は、巣に近づく敵に攻撃をすることがあるので、むやみに巣に近づくのはやめましょう。
また、まれにですが、ミツバチが民家の屋根裏などに巣を作る場合があります。
ミツバチの方から人を刺しにくることはありませんが、巣に蓄えられたハチミツで天井が汚れたり、ハチミツにほかの虫が引き寄せられたりするとやっかいです。
ミツバチは、1つの巣で生活する個体数も多いので、家の中でミツバチの巣を見つけたら、業者に頼んで駆除してもらうのがいいでしょう。
マルハナバチ【必要な注意:小】
名前にはあまり馴染みがないかもしれませんが、マルハナバチは住宅地でも見られるので、見たことがある方も多いかもしれません。
分類は
ハチ目・有剣類・ミツバチ上科・ミツバチ科・ミツバチ亜科・マルハナバチ属
というグループで、ミツバチに近いハチの仲間です。日本には
- トラマルハナバチ
- コマルハナバチ
- クロマルハナバチ
- オオマルハナバチ
- ミヤママルハナバチ
- ヒメマルハナバチ
- ニセハイイロマルハナバチ
- ハイイロマルハナバチ
- ニッポンヤドリマルハナバチ
- ウスリーマルハナバチ
- ナガマルハナバチ
- エゾナガマルハナバチ
- シュレンクマルハナバチ
- アカマルハナバチ
- ノサップマルハナバチ
- セイヨウオオマルハナバチ
の16種が生息しています。
比較的涼しい地域を好む種が多く、標高の高いところや、北海道だけに分布する種もいますが、マルハナバチ全体で見ると日本に広く分布しています。
マルハナバチの生態
ここで少し、マルハナバチの生態を見てみましょう。
- 体・食性はミツバチ、生活サイクルはスズメバチ・アシナガバチに似ている
マルハナバチは、日本に生息するミツバチと比べると大きめで毛が長く、ふさふさ・もこもことした印象が特徴です。(正確には、ミツバチとの区別は脚や翅の形でつけられます。)
上のクロマルハナバチの写真でも、さきほどのセイヨウミツバチの写真と比べると、腹部の毛がふさふさしている様子が分かるのではないでしょうか?
マルハナバチは、ミツバチと同じように花の蜜や花粉をエサにしますが、ハチミツを作ることはありません。
また、ミツバチが働き蜂を含む群で冬を越すのに対し、マルハナバチは秋に生まれた新しい女王蜂だけが越冬できます。
体や食性はミツバチに似ていますが、1年の生活サイクルはスズメバチやアシナガバチに似ているのですね。
- 性格や攻撃性、刺されたときの症状は?
1秒に200回も羽ばたきをするマルハナバチは、羽音が大きく怖がられることも多くありますが、性格はとてもおとなしく、近づいても刺されることはありません。
ただし、つかもうとするなどの刺激をすると刺されることがあるので、注意が必要です。持っているのは弱い毒ですが、刺されると痛みがあります。
- 巣が作られる場所と、巣を見つけたときの対応
マルハナバチは土の中に巣を作ります。そのため巣自体はあまり目立ちませんが、マルハナバチが土の中に出入りしているのに気付いて、巣が見つかることがあるのです。
手を出さなければマルハナバチが刺してくることはありませんので、巣を見つけても放っておくようにしましょう。
ここまでは、日本にいるハチの仲間の中で、ハチ刺されに注意が必要な4つのグループのハチについて紹介してきました。
つぎは、ここで取り上げなかったほかのハチの仲間について、紹介していきます!
ほかのハチの仲間についても知りたい!グループごとの特徴
ここからは、日本にいるハチの仲間について、より幅広く種類や特徴を紹介していきます。
あなたはウェブでハチについて調べようとしたとき、
「こっちのサイトとあっちのサイトは、ハチのグループの分け方が違うな…。」
「さっきのサイトで見た名前のハチのグループが、こっちのサイトにはない…。」
など、複雑なハチの仲間分け(分類)に困ったことはありませんか?
じつは、種類が多いハチの仲間には、グループの分け方に複数の方法があるのです。
なぜグループの分け方に複数の方法があるかというと、どんな基準(体の特徴・生態・進化の順番など)でグループを分けるのが適切か、研究者たちのあいだで、まだ議論が続いているためです。
この記事では、『ハチってどんな虫のこと?~ハチの仲間~』で紹介したように、ハチの体の特徴に基づいた分け方に沿って紹介していきます。
順番もこれまでと同じで
- ハバチ亜目(広腰亜目)
- ハチ亜目(細腰亜目)
- 有錐類
- 有剣類
の順に紹介していきます。
できるだけ分かりやすく、ハチのグループ分けの全体像が把握できるように紹介していきますので、基礎知識として参考にしてもらえればと思います。
しかし残念ながら、この記事で日本にいる4500種を超えるすべてのハチを紹介することは困難です。
その代わり、最後には日本にいるハチの仲間の画像が見られるサイトもいくつか紹介しますので、
「自分が見たハチの種類を知りたい!」
という方は、そちらのサイトも覗いてみてくださいね。
ハバチ亜目(広腰亜目)
ハチの仲間のうち、上の写真のように体にくびれがないハバチ亜目というグループに分けられるハチは、日本にいるだけで720種以上、未解明の種を含めると1000種以上いると考えられています。
ハバチ亜目のハチは、翅に見られる筋(翅脈)の分布や触角の形などの体の特徴から、さらに細かいグループに分けられ、日本には11のグループに分けられるハチが生息しています。
- ナギナタハバチ科
- ヒラタハバチ科
- ヨフシハバチ科
- ミフシハバチ科
- コンボウハバチ科
- マツハバチ科
- ハバチ科
- クキバチ科
- キバチ科
- ヤドリキバチ科
- クビナガキバチ科
ハバチ亜目に含まれるハチの仲間では、産卵管が毒針に変化していないため、人が刺されることはありません。
しかし、ハバチ亜目のハチでは、ほとんどの種の幼虫が植物をエサにしており、食害が問題になることがあります。
ハチ亜目(細腰亜目)
体にくびれのあるハチ亜目というグループに分けられるハチの仲間は、日本で確認されているだけでも4000種近くの種がいます。
これまでも紹介してきたように、ハチ亜目のハチは、メスの産卵管の形状や機能によって有錐類と有剣類に分けられます。
より産卵がしやすいように産卵管としての機能が発達しているのが有錐類、産卵管が鋭くなっていて、針として獲物の捕獲や外敵への攻撃に使用するのが有剣類です。
ここからは、有錐類と有剣類のそれぞれについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
有錐類(寄生蜂下目)
日本で確認されているだけで2500種ほどの種がいる有錐類のハチの仲間も、体の特徴によってさらに10のグループに分けられます。
- タマバチ上科
- コバチ上科
- クロバチ上科
- ハラビロクロバチ上科
- ヒゲナガクロバチ上科
- ツノヤセバチ上科
- ミゾツノヤセバチ上科
- ヤセバチ上科
- カギバラバチ上科
- ヒメバチ上科
この10のグループの中には、1つのグループ内のハチが、より細かいグループに分けられることもあります。
たとえば、日本にいるヒメバチ上科に属するハチは、ヒメバチ科とコマユバチ科というグループに分けられる、という感じです。
この有錐類に分けられるハチの仲間は、昆虫やクモの卵や体に自分たちの卵を産みつけます。
このように寄生生活を送る期間があることから、有錐類は寄生蜂下目(きせいばちかもく)と呼ばれることもあります。
しかし、ハバチ亜目や有剣類にグループ分けされるハチの中にも、ほかの昆虫などに寄生するハチがいるので、すべての寄生蜂が有錐類のグループに入っているわけではありません。
有錐類のハチの産卵管は鋭くないため、ちくり、と感じることはあっても、刺さることはないでしょう。
また、手でつかむなどしない限り、刺そうとしてくることもありません。
有剣類
日本でおよそ1400種が確認されている有剣類のハチも、ハバチ亜目や有錐類のハチと同じように、体の特徴によってさらに細かい3つのグループ
- セイボウ上科
- スズメバチ上科
- ミツバチ上科
に分けられます。
有剣類は、このように体の特徴による分け方のほかに、さまざまな分け方や呼び方があります。
少し複雑なので、まずは下の表2を見てください。
表2
有剣類 | セイボウ上科 | カリバチ | |
スズメバチ上科 | |||
ミツバチ上科 | アナバチ型群 | ||
ミツバチ型群 | ハナバチ |
この表2にあるように、ミツバチ上科はアナバチ型群とミツバチ型群に分けられます。
ミツバチ型群に含まれるハチは、花の蜜や花粉を幼虫のエサとする種で、その特徴から『ハナバチ』と呼ばれることがあります。
一方アナバチ型群のハチは、ほかの昆虫などを幼虫のエサとする種です。場合によってはアナバチ上科として、ミツバチ上科と同列に扱われていることもあります。
セイボウ上科とスズメバチ上科のハチは、アナバチ型群のハチと同じように、ほかの昆虫などを幼虫のエサにするハチです。
そのため、これらは合わせて、『カリバチ』または『カリウドバチ』と呼ばれます。
3つの上科はそれぞれ、さらに細かい複数のグループに分けられています。
ハチのことを紹介するサイトで、比較的よく登場する科や種と合わせてまとめると、つぎのようになっていますので、参考にしてみてくださいね。
【セイボウ上科】
セイボウ上科に含まれる科:セイボウ科・アリガタバチ科など
セイボウは漢字では『青蜂』と書きます。
セイボウ上科のすべてのハチが青い色をしているわけではありませんが、ため息が出るほど美しい色のハチがたくさんいるので、興味がある方は調べてみてくださいね。
【スズメバチ上科】
スズメバチ上科に含まれる科:スズメバチ科・ツチバチ科・ベッコウバチ科・アリ科など
ドロバチもスズメバチ上科に含まれ、独立したドロバチ科とされる場合と、スズメバチ科に含まれる場合があります。
【ミツバチ上科】
<アナバチ型群>
アナバチ型群に含まれる科:アナバチ科・セナガアナバチ科など
アナバチ科の中には、ジガバチが含まれます。
<ミツバチ型群>
ミツバチ型群に含まれる科:ミツバチ科・コシブトハナバチ科・ハキリバチ科など
体が黒くて、体長が2 cmほどあるクマバチは、ミツバチ科に含まれます。
有剣類のハチの産卵管は、鋭くなっており、刺されることがあります。
しかし、さきほど取り上げたスズメバチ・アシナガバチ・ミツバチ・マルハナバチ以外のハチであれば、人がいたずらをしない限り、刺そうとはしてきません。
ハチを見かけても、手を出さないように徹底すれば、ハチ刺されの被害に遭う確率は大きく減らすことができるでしょう。
ハチの仲間の種類や特徴についての説明はここまでです。
いかがでしょうか?「そういうことだったのか!」と思ってもらえる部分が、少しでもあったでしょうか?
最後は、ハチの仲間の画像が見られるサイトについて紹介しますね。
ハチの仲間の画像が見られるサイト
ハチのような虫を見つけたとき、
「これは何ていう名前かな…?」
と思う方のために、ハチの仲間の画像を公開しているサイトをいくつか紹介します。
ハチ全般
【岐阜聖徳学園大学 教育学部 川上紳一教授 『理科教材データベース』】
岐阜聖徳学園大学教育学部の川上紳一教授は、ご自身の研究室のサイトで『理科教材データベース』を公開されています。
その中に昆虫図鑑があり、ハチの仲間も多数紹介されています。
<ウェブページヘの行き方>
岐阜聖徳学園大学 教育学部 地学・川上研究室>理科教材データベース>動物>昆虫図鑑>ハチ・アリ
川邊透さんという、昆虫図鑑などの執筆もされている方が運営されている方が運営されています。
ハチ以外にも、カブトムシやチョウなど、さまざまな虫を取り上げていらっしゃいます。
<ウェブページヘの行き方>
昆虫エクスプローラ>ハチ
以上の2つのサイトは、画像を一覧で見ることができますので、ハチの名前や体の細かい特徴が分からなくても、使うことができます。
マルハナバチ
【マルハナバチ国勢調査】
国内のマルハナバチの研究を目的に、大学の研究者の方が中心となって立ち上げたプロジェクトのサイトです。
マルハナバチの種の画像が、詳しい特徴とともに掲載されているので、とても分かりやすいです。
さらに、『種ごとに日本のどこに生息しているか』という分布についても記載があるので、その分布も参考にできそうですね。
<ウェブページへの行き方>
マルハナバチ国勢調査>見分け方
また、黄色と黒の体の虫を見て「ハチだ!」と思っても、じつは違う虫という可能性もあります。
「ハチの仲間をいくら探しても、自分が見た虫が見つからない…。」
そんなときは、こちらの記事もチェックしてみてくださいね!
まとめ
この記事では、ハチの種類とそのグループ分け、さらにハチのグループごとの針(産卵管)・毒の特徴などについて紹介してきました。
ハチの仲間はとても数が多く、グループ分けが複雑ですが、あなたがハチについて知りたいと思ったとき、少しでもこの記事の情報が役に立てばうれしく思います。
それでは、この記事のポイントをおさらいしましょう。
- ハチの仲間は、ハバチ亜目とハチ亜目に分けられる。
- ハチ亜目はさらに、有錐類と有剣類に分けられる。
- 刺されないように、とくに注意が必要なのは、つぎの4つのグループのハチだけである。
- スズメバチ
- アシナガバチ
- ミツバチ
- マルハナバチ
- 上記の4グループ以外のハチは、つかむなどのいたずらをしなければ、刺されることはない。
ハチの仲間は、まだまだ確認されていない種が多くいると考えられています。
ですので、もしかしたら、あなたが見つけたハチが新たに図鑑に載る、ということもあるかもしれませんね。