スズメバチは何度で死ぬの?〜ミツバチの蜂球から知る致死温度〜

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スズメバチとメギの花

スズメバチは、冬になるとほとんどの個体がその生涯に幕を閉じます。

これは、スズメバチの体には体温を一定に保つためのシステムがなく、気温の変化にともなって、体温が生命活動ができる範囲から外れてしまうためです。

つまりスズメバチは、気温が高すぎても低すぎても死んでしまうのです。

このような事実を知ると、

「じゃあスズメバチが生きられる気温の範囲は、何度から何度までなんだろう?」

「温度変化を利用すれば、スズメバチを駆除することができるの?」

などの疑問を持つ方もいますよね。

この記事では、スズメバチの生死と温度の関係について、探っていきたいと思います。

スズメバチは暑さに弱い?〜ミツバチの蜂球から知る〜

高温を示す温度計

スズメバチの高温側の致死温度については、ミツバチがスズメバチに巣を狙われたときの対抗手段である『蜂球』から知ることができます。

大きくて凶暴なスズメバチですが、ミツバチが群れて作る蜂球に囲まれると死んでしまうということは、知っている人も多いのではないでしょうか。

蜂球によってスズメバチが死んでしまう理由こそ、蜂球内の温度が高く、スズメバチの致死温度に達してしまうからなのです。

「見るからに強そうなスズメバチが、蜂球の中の温度が高いだけで死んでしまうなんて本当!?」

「何度くらいの温度になれば、スズメバチをやっつけることができるの?」

このようなスズメバチと温度の関係の疑問については、ミツバチの蜂球を詳しく知ることで解決できます。

それでは、ミツバチの蜂球とはどのようなものなのかをご紹介した上で、スズメバチの生死と温度の関係について深く探っていきましょう。

ミツバチの蜂球って?

スズメバチがミツバチ(ニホンミツバチ)の巣を襲撃した時、その対抗手段としてミツバチはスズメバチを囲むように群で固まって球体状になります。これが蜂球と呼ばれる状態です。

蜂球に参加したミツバチ達は、体を激しく動かして蜂球内部の温度を高くします。その結果、中に閉じ込められたスズメバチは、高温に耐えられず生き絶えてしまうのです。

このように体の小さいミツバチも、集団になることによって自分よりも体の大きなスズメバチをやっつけることができます。

蜂球はミツバチにとって、1番の天敵であるスズメバチに対する強力な攻撃手段だと言えるでしょう。

【分蜂球との違い】

ミツバチが群らがるもう1つの蜂球として、分蜂球と呼ばれるものがあります。この分蜂球は、スズメバチへの対抗手段ではなく、分蜂と呼ばれる群を分割する段階で見られる蜂球です。

規模が大きくなったミツバチの群は、古い女王蜂が働き蜂の半分程度を連れて、巣の外へ出ます。しかし、外に出たミツバチたちは巣がないため、新しい巣を作らなければなりません。

その新しい巣を作る場所探しの途中で、外に出たミツバチが集まって休憩を取るときに作るのが、この分蜂球なのです。

スズメバチへ攻撃をする際の蜂球は、小さくまとまって、言葉通り球体状をしています。

一方、分蜂球については球体状をしておらず、スズメバチの大群が木の枝などに群がっているだけであるのが特徴です。

このような特徴の違いから、見た目の面でも簡単に区別することができます。

スズメバチと戦う!ミツバチの蜂球戦略

ミツバチの蜂球は、スズメバチがミツバチより熱に弱いという点を上手く突いています。

それだけでなく、蜂球に参加するミツバチの犠牲を少なくする工夫、温度以外にもスズメバチの致死率を高めるための要素があるなど、非常に戦略が練られている攻撃方法です。

それでは、蜂球はどのようにしてスズメバチをやっつけているのか、目から鱗の蜂球の戦略をご紹介していきましょう。

計算は完璧!スズメバチの致死温度と蜂球の温度

蜂球には、ミツバチは生かしたままスズメバチだけをやっつける、緻密なメカニズムがあります

その特筆すべき点として、早急に蜂球内の温度を高くできるようにチームプレーを行っていること、そしてスズメバチだけが死ぬ、ちょうどその温度を維持するようにしていること等があげられます。

【蜂球内の温度上昇とその仕組み】

蜂球が作られると、その内部温度は46度程まで上昇します。

これほどまでに高い温度を作り出せるのは、蜂球に参加しているミツバチが集団で筋肉を振動させて、熱を発生させているからです。

振動させる筋肉は飛ぶ時に使う飛翔筋と呼ばれる部位であるため、温度を上げている時は羽が小刻みに震えています。

大勢のミツバチが熱を発するため、46度までの温度上昇を達成するのに、たったの5分しか必要ありません。そのため、早い段階で蜂球内のスズメバチは高温で熱せられることとなります。

【蜂球でスズメバチだけが死ぬ理由】

蜂球内に閉じ込められたスズメバチは死にますが、蜂球の内部にいるミツバチは死にません。

この不思議な現象には、スズメバチとミツバチの温度耐性の違いが関係しています。実は、スズメバチはミツバチよりも高温への耐性がないのです

蜂球の中に捕らえられたスズメバチは、蜂球内の温度が44度を超えると死ぬのに対して、ミツバチは蜂球の中のような環境下でも50度から51度まで、死なずに耐えることができます。

上記のことから分かるのは、蜂球の温度設定が、スズメバチは死ぬけれどミツバチは死なないようになっているということです。このような点から、蜂球は緻密に戦略が練られた攻撃方法だと言うことができるでしょう。

実はこんな戦術も!温度以外のスズメバチを殺す要因

ミツバチが蜂球によってスズメバチをやっつけられる要因として、蜂球内が高温になる以外に、二酸化炭素濃度が高いことと湿度が高くなることが挙げられます。

これは、二酸化炭素濃度や湿度が高い環境だと、スズメバチの持つ温度への耐性がさらに低くなるからです。

蜂球内はミツバチの群によって閉じられた空間になるため、空気の循環が少なくなり、外部の空気があまり取り入れられなくなります。

その環境に加えて、大勢のミツバチが呼吸によって酸素を取り込んで二酸化炭素と蒸気を吐くため、蜂球内は必然的に二酸化炭素濃度が上がり、同時に多湿の状態になるのです。

最終的に、蜂球内の二酸化炭素濃度は4%、湿度は90%まで上昇します。湿度90%は言うまでもなく多湿の状態ですし、二酸化炭素濃度については大気中(約0.04%)の100倍となり、かなり不快な環境です。

スズメバチは、大気中ではおよそ47度くらいまでは耐えることができますが、蜂球内の高い二酸化炭素濃度と多湿の環境は、スズメバチの致死温度を44度まで下げてしまいます。

この状態で蜂球内の温度は46度まで上昇するため、致死温度を2度も超えた環境となり、スズメバチは死んでしまうのです。

なお、ミツバチにおいては不思議なことに、蜂球と同じ程度の高い二酸化炭素濃度と湿度の環境下でも致死温度は変わりません。

その点も、蜂球でミツバチは死なずにスズメバチだけを殺すことができるポイントの1つでもあります。

どのくらいで撃退する?スズメバチが死に至るまでの時間

スズメバチは、蜂球内の高温多湿と高い二酸化炭素濃度の環境で死ぬことが分かりました。次に疑問になるのがその環境下でどれくらいの時間をかけて死に至るのかという点です。

致死温度の環境に置かれたスズメバチは、ほとんどの個体が10分が経過すると既に死んでいます

蜂球は形成されると30分以上持続する傾向があるので、蜂球の状態が終わる頃にスズメバチは完全に死んでいるのです。

例外的に、キイロスズメバチの働き蜂については、10分が経過しても死んでいないケースが多くありますが、それでも時間が経過すれば死ぬほどに衰弱しています。

これらの点から、スズメバチを致死させるのに必要な時間は、10分程度だと考えられるでしょう。

寒さも苦手?スズメバチの低温側の致死温度

霜が降りた植物

はじめに説明したように、スズメバチは高温が苦手なだけではなく、低い温度も苦手な性質があります。

これは、気温が20度を下回ると活動が低下することや、12月から1月頃になって気温が10度を下回るようになると、主な種類のスズメバチの働き蜂・オス蜂はほぼ死んでいることからも分かることです。

特に20度という気温は、スズメバチの活動性が高まる境界線になっています。20度を下回る気温ならば、スズメバチの活動は少なくなり、20度を超える気温ならば活動性が高まるという形です。

ただし、スズメバチは気温が20度を下回っても、即死するわけではありません。

気温が下がるほど活動が減少し、餌や水分摂取をしなくなって衰弱して死ぬので、蜂球のような熱による即効性があるわけではない点には注意が必要です。

また、スズメバチの女王蜂は冬眠をして越冬をしますが、この冬眠時の女王蜂においては気温が氷点下を下回っても生存しています。ですので、女王蜂は低温で死ぬわけではないことにも留意しておきましょう。

まとめ

今回の記事では、スズメバチが生きられる温度の範囲についてまとめました。

ミツバチの蜂球によるスズメバチ撃退術は、高い温度などの環境を作り出すことで、スズメバチを蒸すように殺しています。

この蜂球のメカニズムの解明により、スズメバチが一定の温度に達すると死んでしまうという特徴を知ることができました。

また、スズメバチは寒さへの耐性も低いため、低温の環境下において活動をしなくなり、徐々に衰えて死んでしまうという性質も有しています。

それでは、この記事のポイントとして押さえて欲しい項目として、以下の4点が挙げられます。

  • スズメバチは温度変化への耐性に乏しく、温度変化によって死んでしまう。
  • 蜂球の中のスズメバチが死に至る温度は44度であり、蜂球の内部はそれを2度超える46度まで上昇する。
  • ミツバチはスズメバチを囲んで蜂球を形成し、高温多湿・高二酸化炭素濃度の環境を作り出す。
  • スズメバチは寒さにも弱く、気温が20度を下回ると活動しなくなる。

これらのポイントを押さえて、スズメバチと温度の関係性についての理解を深めてくださいね!