「コウモリが家に住み着いている…」
「大量の菌を持っていると聞くけど、何か病気がうつることはあるの?」
家に住み着くコウモリをなんとかしたいけど、菌や病気の影響が気になる。フンや騒音に困っているけど、コウモリの姿を実際に見たわけでもないので、まだ駆除するタイミングを見計らっている…なんて人も多いのではないでしょうか?
しかし、野生のコウモリは、大量の菌やウイルスを持つ危険な動物です。そのため、コウモリが家に住み着いているのを見つけたら、早いうちに駆除する必要があります。
「コウモリから何かの病気がうつることはあるの?」
「…狂犬病がうつるかもしれないって本当?」
そんな不安や疑問にお答えするべく、コウモリが持つ菌や病気の影響について、くわしくまとめています。
それではさっそくみていきましょう!
目次
コウモリからうつる病気はある?
野生のコウモリは大量の菌やウイルスを持っています。
では、コウモリからうつる病気があるのかどうか…というのが気になるところですよね。
コウモリが媒介する感染症と言えば、まずは狂犬病が挙げられます。他にもアルボウイルス、ニパウイルス、ハンタウイルス、ヒストプラズマ症、エボラ出血熱などといった恐ろしい感染症もコウモリが媒介する可能性があると考えられています。
また恐ろしい感染症だけでなく、コウモリが媒介する可能性のある寄生虫も軽視することはできません。
この章ではこれらの感染症や寄生虫についてもそれぞれ説明していきます。
海外では「狂犬病」に感染する可能性が高い
海外ではコウモリが狂犬病ウイルスを持っているということが確認されていますが、幸いなことに、日本ではコウモリによる狂犬病の感染例は出ていません。
しかしアメリカでは、狂犬病による死亡原因のうちもっとも多いのは、コウモリからの感染であるとされています。(参考文献:厚生労働省 検疫所)
現時点では、日本で感染の可能性はほとんどありませんが、今後狂犬病ウイルスが輸入される可能性が0であるとは言い切れません。
海外では多くの感染症を媒介する存在として知られているので、今後も警戒は必要だと言えます。
そもそも狂犬病とは?
狂犬病は全ての哺乳動物に感染する人畜共通感染症です。動物の咬傷からウイルス感染することが多く、まれに開放創や粘膜にウイルスが侵入して感染することもあります。
人が狂犬病に感染すると、発熱、頭痛、倦怠感、筋痛、嘔吐などの風邪のような症状を発症し、不全麻痺や神経麻痺などの神経症状や錯乱、幻覚、恐水症などの脳炎症状を経て、最終的には昏睡状態に陥って死に至ることがほとんどです。
狂犬病は通常1~3か月、長くて1~2年の潜伏期間がありますが、臨床状態になってからの進行はとても早く、7~14日ほどでほぼ100%死に至ると言われています。
現在世界で狂犬病清浄国と呼ばれているのは、日本を始め、英国、オーストラリア、ニュージーランドなどごく限られた地域のみです。毎年5万人以上の人間が狂犬病により亡くなっており、そのうちの90%がアジアで発生しています。
狂犬病になったコウモリはどうなる?
狂犬病になったコウモリは凶暴になったり、方向感覚を失って障害物に激突したりすることがあります。
障害物とぶつかったコウモリは麻痺状態になり、弱った状態をペットなどに捕まえられ、ペットから人へと狂犬病ウイルスが広がることが多いようです。
その他、コウモリから感染する可能性のある病気
コウモリが原因となる人畜共通感染症の研究はあまり進んでいないというのが実情ですが、海外において多くの感染症がコウモリ由来ではないかと疑われています。
狂犬病の他にも、アルボウイルス感染症、ニパウイルス感染症、ハンタウイルス感染症、ヒストプラズマ症、エボラ出血熱などが挙げられます。
それらのコウモリ由来が疑われる感染症や、コウモリが媒介する可能性のある寄生虫などについてもそれぞれ説明いたします。
アルボウイルス感染
アルボウイルスにはデングウイルス、日本脳炎ウイルスなど人間に重篤な症状を引き起こすウイルスが多く含まれます。
ダニや蚊、サシチョウバエなどの節足動物によって媒介されることが多く、脊椎動物に吸血する際に感染します。感染しても殆どが無症候性ですが、脳炎や出血熱、髄膜炎など重篤な症状に陥ることもあります。
ニパウイルス感染症
ニパウイルス感染症は発症すると急性脳症や呼吸器感染症を引き起こし、高い致死率に及ぶほか、神経障害など重篤な後遺症を残す極めて予後不良な疾患です。
ニパウイルス感染症は1998年~1999年にかけてシンガポール、マレーシアで初めて発生した疾患です。はじめは豚が感染源となり、265名の人が発症し、そのうち半数近くに及ぶ105名が死亡しました。
このときの伝播経路を明らかにするために大規模な野生動物の調査が行われた結果、フルーツバットと呼ばれるオオコウモリが自然宿主であることが判明しました。
ハンタウイルス感染症
ハンタウイルス感染症はかつて日本においても1960年代に大阪梅田駅近くで、そして1970年代~1980年代に医学系動物実験施設で感染が広がったという事例が報告されています。
ウイルスの自然宿主はネズミであることが殆どですが、一部のコウモリもハンタウイルスを保有していることが報告されています。
ハンタウイルス感染症の感染源がコウモリである事例についてはまだ報告されていませんが、コウモリと家ネズミの生活環境が似ていることから、人間への感染源になる可能性は十分にあると考えられています。
初めの症状は発熱、咳、悪寒、嘔気・嘔吐、下痢、めまい、関節痛などの風邪様症状ですが、短期間のうちに症状が急速に進行して呼吸困難を引き起こし、致死率が高いのが特徴です。
ヒストプラズマ症
ヒストプラズマ症は真菌症の一種で、胞子を吸い込むことが主な感染経路ですが、まれに創傷から感染することもあります。
症状は多くが無症候性、もしくは軽い風邪様症状で自然消退しますが、大量の胞子を吸うと肺炎を起こしたり、全身に広がって臓器に損傷が出てしまったりすることもあります。
1993年にアマゾン川近くの洞窟を訪れた日本人ツアー客が、ヒストプラズマ症に集団感染しました。このときの感染原因として、洞窟内のコウモリの糞が舞い上がり、空気中に含まれていたヒストプラズマを吸い込んだからではないかと考えられています。
エボラ出血熱
エボラ出血熱は1976年に初めて人間への感染が確認された感染症です。それ以来、現在に至るまでアフリカで数年おきに発生しています。
2014年に西アフリカで流行した際の感染源は、最初の感染者となった幼児がよく遊んでいた木の洞に住むオヒキコウモリが原因であると考えられています。
症状は発熱、強い脱力感、筋肉痛、頭痛、嘔吐、下痢、発疹などが起き、肝機能や腎機能が低下します。さらに症状が進むと激しい出血症状が出ることもありますが、必ずしも出血するわけではないということから、最近ではエボラ出血熱ではなくエボラウイルス病と呼ばれるようになっています。
発症者のうち50~90%が死亡している、きわめて致死率の高い感染症です。
感染症だけじゃない!?コウモリが媒介するかもしれない寄生虫について
コウモリは様々な感染症の保有者になるばかりでなく、人間に様々な悪影響を及ぼす寄生虫も宿すことがあります。コウモリに主に寄生するマダニやコウモリマルヒメダニ、コウモリトコジラミなどについて説明します。
- コウモリマルヒメダニ…体長、体幅ともに4mm前後。刺されると円形紅斑や水泡を形成し、激しいかゆみを伴う。
- コウモリトコジラミ…体長4~6mm。刺咬後すぐに症状は出ないが、数日後に吸血痕が痒みを伴う腫れが出る。
- マダニ…体長3~4mm。固い外皮に覆われているのが特徴。
特にマダニの場合、咬まれることで重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を発症し、その後死亡したというケースも報告されているため警戒が必要です。
コウモリの糞は細菌だらけ。除菌・消毒も忘れずに!
コウモリの糞は5~10mm程度の大きさで、夏季になると軒先や屋根の下に落ちていることが多くなります。
コウモリは大食いなので糞の量も多く、屋根裏などの見えない場所に大量に糞をされると天井にシミができたり悪臭に悩まされたりすることもあります。
コウモリは昆虫しか食べないので、ネズミの糞に比べると乾燥していてすぐに崩れてしまうという特徴があります。乾燥している分、崩れた糞は空気中に飛散しやすくなります。
コウモリの糞には菌やウイルス、カビや寄生虫の卵など様々な病原菌が含まれている恐れがあります。糞に直接触れたり、粒子となった糞を吸ってしまったりすることで感染症を引き起こす恐れもありますが、大量に吸い込むことで喘息などのアレルギー症状を引き起こすケースもあります。
コウモリの糞に触れてしまったらどうする!?
もしもコウモリの糞に触れてしまったら、必ず石鹸でしっかりと患部を洗い、できればアルコール消毒もすることをオススメします。
菌がついた手で口元や鼻などに触れると感染症やアレルギー症状を引き起こす可能性があります。万が一傷口や粘膜に触れてしまった場合は、速やかに医療機関に問い合わせてください。
コウモリが家に住み着いている場合の対処法
コウモリが家に住み着くと、大量の糞害にも悩まされることになります。被害が広がれば広がるほど糞害のリスクも高まるため、早めに対処することが大切です。
この章ではコウモリが住み着いてしまった場合の対処法や知識について紹介したいと思います。
コウモリを捕獲したいんだけど…
コウモリが家に住み着いてしまった場合、捕まえて追い出すのが一番カンタンですよね。
しかしコウモリは害虫をたくさん食べてくれる益獣として扱われているため、鳥獣保護法によって守られています。そのため許可なく捕獲したり殺傷したりすることは法律で禁止されているのです…!
もしもコウモリが家に住み着いてしまったら、私たちにできることは「傷つけることなく追い出す」ことのみです。
スプレータイプや燻煙型のコウモリの忌避剤を使ってコウモリを追い出しましょう。駆除するなら、コウモリがエサを求めて活動を始める夕方頃がチャンスです。
くわしい駆除方法が知りたい方は以下の記事もチェックしてみてくださいね!
コウモリを確実に駆除するためにやるべきこと、効果があった駆除グッズの紹介! |
コウモリを追い出した!それからどうすればいい?
忌避剤を使ってコウモリを無事に追い出すことに成功しても、まだ安心するのは早いと言えます。
何故ならコウモリには帰巣本能があり、元いた場所に戻ろうとするからです。そのためコウモリを追い出したら、侵入経路を塞ぐことがとても大切です!
家の中から全てのコウモリを追い払ったことを確認したら、コウモリの侵入経路を金網やパンチングメタルなどで塞ぎます。広範囲にわたって塞ぎたい場合は、防鳥ネットで覆いましょう。
駆除が難しい場合は業者に依頼
コウモリの駆除はコウモリに対する正しい知識が必要になります。また糞尿や死骸の始末は感染症などのリスクを伴いますし、精神的な負担も大きいと言えるでしょう。
もしも駆除が難しいと感じた場合は、プロの駆除業者に依頼することも検討してみましょう。
業者に依頼するメリットとして、
- コウモリの死骸や糞尿の始末・消毒をしてくれる
- プロの駆除業者であれば確実に駆除をしてもらえる
- 侵入経路を塞ぐ作業も任せられる
- 万が一再発してもアフターケアがついているので安心
- プロの駆除業者がついてくれることで精神的負担が減る
などが挙げられます。
コウモリ駆除には不安がつきまとうので、特に精神的な負担が減るというのは大きいと言えるでしょう。
まとめ
コウモリ被害が広がってしまうと、その分感染症のリスクが高まってしまいます。コウモリ被害を確認したら速やかに対処し、一日も早く安心して暮らせる毎日を取り戻してくださいね。
この記事のポイントとして抑えて欲しいのは以下の3点です。
- コウモリの糞には菌、ウイルス、カビ、寄生虫などが含まれている可能性があり、感染症を引き起こすリスクは甚大である。
- 日本におけるコウモリ由来の感染症はまだ報告されていないものの、今後も警戒する必要がある。
- コウモリ駆除は難しく、糞尿や死骸の始末には危険を伴うため、プロの駆除業者に依頼することも検討するとよい。
以上のポイントを押さえ、速やかに、そして確実にコウモリ対処をしてくださいね!