軒ゼロ住宅(軒のない家)は雨漏りしやすい?メリットとデメリットまとめ

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近年人気の「軒ゼロ住宅」。そのスマートでデザイン性の高い外観から、若い人の間や、都心の狭小地などで多く採用されています。

しかし、軒の長さが原因で、雨漏りのリスクが増加することをご存じでしょうか。多額の資金を費やして、新築やリフォームをした後に、雨漏りが発生してしまっては、せっかくのオシャレな住宅が台無しですよね?

そうならないために、軒ゼロ住宅の雨漏りリスクや、その回避方法についてみてみましょう。

軒ゼロ住宅とは?

「軒ゼロ住宅」とは、軒部分が25cm以下の住宅のことです。

…と説明されても、ピンと来ない方もいらっしゃると思います。

まず、「軒」とは、外壁から外へ出ている屋根の部分を指します。それを全く無しにしてしまう、または25cm未満の短かいものが設置されている家屋の総称が、「軒ゼロ住宅」です。

昔ながらの戸建て住宅は、軒の長さがたっぷりあるのが特徴でした。夏は真上からの強い日差しを遮り、雨の日も縁側を開けて風を通せるように。冬は斜めからの日差しを取り込み、室内を明るく暖かく保てるように。四季があり、降雨量の多い日本ならではの工夫です。

しかし、近年では家庭でも冷暖房が完備したことから、外気をあまり気にせず、一年を通じて、屋内で快適に過ごすことができるようになりました。そのため、軒を長くとるよりも、デザイン性や居住スペースの広さを重視した設計が目立つようになっています。

一見メリットばかりのような軒ゼロ住宅ですが、実は、いくつかのデメリットも懸念されます。

ここからは、軒ゼロ住宅のメリット・デメリットについて、それぞれみていきましょう。

軒ゼロ住宅のメリット

近年増加している軒ゼロ住宅。人気の理由は、主に以下の4つが挙げられます。

スタイリッシュなデザイン

デザイン性を重視する住宅には軒ゼロが多く採用されています。フラットな屋根で、BOXのように見えるシンプルモダンな外観や、片流れの屋根にソーラーパネルを目一杯配置したようなものをよく目にします。

居住スペースをより多く確保できる

狭小地などでは、ぎりぎりいっぱいまで居住空間をできるだけ確保する必要があるため、軒を設けないのが一般的になっています。

建築コストの削減

軒を長くすると、その分、材料費や施工費用が上乗せされてしまうため、軒をカットすることによって建築費用が抑えられます

室内が明るい

自然光をたっぷり取り込んで、部屋全体を明るくすることができます。窓の配置によって、日中は電気をつける時間を減らせます。

軒ゼロ住宅のデメリット

軒には本来住宅を守る大切な役割があります。その軒を設置しないと、いったいどんなデメリットがあるのでしょうか。

外壁が劣化しやすい

直射日光を受ける時間が長くなるため、外壁が劣化しやすくなります。特に、紫外線に弱いシーリング材の傷みは、雨漏りの原因になることがあります。

壁の背面に水が回りやすい

壁面が直接雨にさらされるため、経年劣化や台風被害などによる外壁の小さなクラックから、壁の背面に水が回りやすくなります。

室外機や給湯器には過酷な環境

軒のあるなしはエアコンの効きにも影響します。また、屋外に設置しなければならない室外機や、給湯器は風雨や強烈な日差しから守られているほうが、より長持ちします。

雨や日光が窓からの降りこむ

軒がないと、弱い雨でも室内に降りこんでしまうので、雨天時には家全体を締め切ることになってしまいます。また、強い日差しが直接室内に入ってくるため、床材が日焼けしやすくなります。

軒ゼロ住宅を建てる際の雨漏り対策法

このように、かっこいい軒ゼロ住宅には、メリットも多くある半面、住宅自体の耐久性や、雨漏りリスクに不安があることがわかりました。もし軒が長く出ていれば、簡単には室内には浸水しません。

それを理解した上で、土地やデザインの好みなどの理由から、やはり、どうしても軒ゼロ住宅にしたい場合は、どのようなことに気を付ければよいのでしょう。

次に、いくつか、具体的な対策を挙げてみたいと思います。

窓に庇(ひさし)をつける

庇とは、家屋の開口部(窓や玄関)の上に取り付ける、小さな屋根のことです。窓周辺からの雨漏り事例は、数多く報告されています。窓に庇を取り付けることで、少なくともシーリング材が多用されている窓回りだけでも守ることができます。

外壁に防水対策を施す

外壁の防水にはいくつかの方法があります。

  • 防水機能のある塗料を外壁に塗装する
  • 水をはじくタイプの外壁材(磁器タイルなど)を採用する
  • 外壁仕上げの前に防水シートを貼る

などが代表的です。

何れも一般的には業者に依頼する作業になるので、建築時にしっかり打ち合わせをすることが重要です。

雨樋を詰まらせない

雨樋が落ち葉や土埃などで詰まっていると、そこからオーバーフローした雨水が全て外壁を伝って流れ落ちることになるため、雨樋の定期的なお掃除が必要です。

ただし、はしごや園芸用の道具などを使って、手が届く範囲で行いましょう。二階以上の場所は業者に依頼してください。安全第一です。

傷んだ箇所の早期発見と修繕

建築後も定期的なメンテナンスが必要です。

外壁の小さなクラック(ヒビ割れ)などから侵入した雨水が、構造体を伝って、室内の意外な所から漏水する場合があります。雨漏りの原因となりそうな箇所は、早めに見つけて修繕したいものです。

住宅メーカーの定期点検を利用したり、専門の業者に依頼するなど、大事故に発展する前に、未然に雨漏りを防ぐことが大事です。

点検口を設ける

もしも雨漏りが起こってしまったら、外壁側には無数の原因箇所が考えられ、点検に時間も手間もかかってしまいます。点検口を設けておくことで、室内側から原因を早期に特定することができ、便利です。

保険で備える

雨漏りなどの住宅トラブルは、火災保険で無償修理できるケースがあります。雨漏りや屋根の修理は、工事規模にもよりますが、場合によっては高額になることもあります。保険の内容をよく確認し、事前に備えておくと安心です。

まとめ

最近流行りの軒ゼロ住宅について、いろいろな面からみてきました。その結果、以下の点がはっきりしました。

  • 軒ゼロ住宅は雨漏りの原因となる

軒ゼロ住宅のすべてに問題があるわけではありませんが、直射日光や直接の雨にさらされるような造りは、外壁が劣化しやすく、雨漏りの原因となります。また、軒を施工する初期費用を抑えても、軒を設置しなかったばかりに、後のメンテナンス代のほうが高くついてしまうことも考えられます。夏の日差しが強く、雨の多い日本には軒ゼロ住宅は不向きと言えるでしょう。

  • 軒ゼロでも雨漏りから住宅を守るには

それでも、どうしても、軒ゼロ住宅を建てたい方は、窓の上に庇をつける、防水対策をするなど、雨漏り対策の施工をしっかりと行ってもらいましょう。外壁のクラック、住宅の継ぎ目や、窓回りのシーリング材の劣化などから、浸水をなるべく防ぐことができます。

  • 定期的なメンテナンスが必要

既に軒ゼロ住宅へお住まいの場合は、専門の業者による定期的な点検をおすすめします。早めの対策で、住宅の劣化を最小限に抑えることができます。

スタイリッシュな外観や居住スペースの広さと、日本の風土にあった家屋の機能性、そのどちらを重視して住宅を建てるかは、人それぞれです。

多くの方にとって、住宅購入は、一生に一度の大きな出来事となるはずです。軒ゼロ住宅のメリット・デメリットをよく理解し、十分検討された上で、快適なお住まいを是非手に入れてくださいね。