窓やドアは閉まっているのに、いつの間にか床が濡れている…。でも、天井からは雨水が滴っていない…。こんな床の雨漏りにお困りではありませんか?
この床の雨漏り、1番やっかいなのは原因を特定するのがとても難しいという点です。一見しただけでは、どこから雨水が入ってきているか分からないからです。だからこそ、気づかない間に被害が拡大し、やがて大変なことになってしまいます。
ここでは、床の雨漏りの原因とその対処法、修理業者の選定方法などをまとめてお伝えします。少しでも床の雨漏りが疑われる場合は、この記事を参考にして、ぜひ早めの対処をとってください。
目次
床の雨漏りの主な原因
天井や壁などにはシミがないのに、室内の床からジワジワと水が滲み出してくるのが「床の雨漏り」です。
この床の雨漏りの直接の原因となる場所は、外壁やサッシ周り、ベランダなどです。それぞれの箇所からの雨漏り事例を見ていきましょう。
- 外壁
台風などの横なぐりの雨のときに発生しやすいのが、外壁からの雨漏りです。外壁のひびや、建材の継ぎ目のシーリングが劣化したところから雨水が入り込むケースがあります。
- サッシ周り
ドアや窓などのサッシ周りのシーリング材の劣化により、そこから雨水の侵入を許してしまう事例が多く発生しています。また、新築施工時にサッシを固定するネジの締め方が弱かったり、ネジが変形していたりすると、その隙間から雨水が入ってくることもあります。
- ベランダ
落ち葉や砂ぼこりで排水溝が詰まり、大雨のときにあふれた雨水がベランダのサッシの下部から室内に入ってくるケースがあります。また、大雨のたびに水たまりができる箇所がベランダにあると、どうしてもその部分だけ先に傷みやすくなります。そういった傷んだ場所は、築年数が浅くても、防水コーティングが劣化して雨漏りを起こすことがあります。
この3つの箇所からの雨漏りには、共通していえることがあります。それは、建物内に侵入した雨水にすぐには気づきにくいということです。
もし、各箇所から雨水が入り込んだ場合、雨水は壁の内側を下へ向かって流れていきます。そして、通常、その雨水は壁の内側にある防水シートで跳ね返されます。仮に防水シートを通過したとしても、断熱材が吸水します。それが床にまで達し、あふれ出てきたときに、初めて雨漏りに気づくのです。ということは、よっぽど大量の雨水が一気に入ってきたか、かなり前から繰り返し雨漏りしていたかのどちらかになります。
雨漏りを放置すると起こる被害
雨漏りの被害には、一次被害と二次被害があります。一次被害とは、雨が入ってきたことで漏電したり、家電が壊れてしまったりなど、すぐに症状が現れるものを指します。そして、雨漏りの本当の恐ろしさは、二次被害の発生で思い知ることになります。
雨漏りを放置すると、次のような二次被害が起こります。
水濡れによる住宅の主な被害
壁の内側や床下の建材を湿ったままにしておくと、雨漏り発生後1~2か月たった頃に、さまざまな症状が現れます。
- 天井・クロス・床のシミ
- カビの発生
- シロアリ・ダニ・ネズミの発生
- 構造体の腐食
これらの被害が酷くなると、雨漏り修理だけではなく、大掛かりなリフォームが必要になってしまうこともあります。例えば、シロアリの食害と木材の腐食が同時に進み、いつの間にか柱1本がなくなっていて家自体が傾く、という恐ろしい事例も過去に発生しています。リフォームをするとなると、高額な代金が発生したり、一時的な仮住まいを探さなければならなかったり、と経済的な負担が大きくなります。
カビの発生に伴う人体の主な被害
湿った建材や家具に発生したカビなどが原因で、人体に次のような症状が現れることもあります。
- 気管支喘息 ・・・咳・呼吸困難など
- アレルギー性鼻炎・・・鼻水・鼻づまり・くしゃみなど
- 過敏性肺炎 ・・・頭痛・発熱・呼吸困難など
このように目に見える症状が現れるほかに、室内がいつもジメジメしていたり、カビの臭いが充満していたりすると、心身にストレスをためこんでしまいます。また、人体だけでなく、ペットにも影響が及ぶこともあります。
そして床の雨漏りの場合、一次被害に気づいたときには、すでに二次被害が発生していると思ったほうがよいでしょう。そのため、一刻もはやく対処することが必要です。
床の雨漏りが起きたときの対処法
では、床の雨漏りを発見したら、どのように対処すればよいのでしょうか?とりあえず自力でできることをご紹介します。
自力でできる応急処置の仕方
- 濡れた箇所周辺にある家具やカーテンなどを移動させる
- 雑巾などで水分をよく拭き取る
- 除菌し、よく乾かす
まず床自体を乾きやすくするために、周囲にあるものは移動させましょう。濡れている部分にソファやカーテンなどが接していると、カビが発生する原因にもなります。
次に水分を取り除きます。雨漏り後の床材は、水分を多く含んでいます。雑巾をしぼったり、取り換えたりしながら、水分がなくなるまで何度も拭き取りましょう。
水分が取り除いたら、最後にスプレータイプの除菌用エタノールで消毒して、乾いた新しい雑巾で床を拭き、よく乾かします。
以上は、あくまでも一時的な応急処置になります。
業者に修理を依頼する
応急処置の方法をご紹介しましたが、自力で対処できるのは、残念ながら目で見て確認できる範囲の被害だけです。雨漏りには見えない部分の被害が多いので、それを調べるには、やはり専門の業者に依頼されることをおすすめします。
業者に説明しやすいよう、雨漏りが発生したときは、次のことをやっておきましょう。
- 発生箇所の写真を撮る
- いつ・どんな状況で発生したか、被害の程度などをできるだけ具体的にメモする
また、建築図面を用意しておくと、その後の修理についての話し合いがスムーズに行えます。
業者に依頼するメリット
雨漏り修理を業者に依頼すると、主に次のような2つのメリットがあります。
- 雨漏りの原因を正確に突き止められる
雨漏り修理で最も重要なのは、最初に雨漏りの原因をしっかり調べることです。雨漏りは、目に見えないところから発生していたり、1か所だけではなく、複数個所から発生したりすることもあり、素人にはどこを修理してよいかの判断がつきかねます。もし、原因をしっかり把握せずに中途半端な修理をしてしまうと、1回の修理では雨漏りがおさまらず、その後何度も修理を繰り返すことになってしまいます。それでは費用も余計にかかりますし、何より修理が長引くことで、精神的なダメージも大きくなります。雨漏り修理を得意としている業者は、特殊な調査方法でその原因を確実に突き止めています。
- 二次被害を最小限に抑えられる
自力でできる雨漏りの応急処置として、目視で確認できる雨漏り箇所に防水テープを貼ったり、コーキング剤を充填したり、という方法を紹介しているサイトもあります。しかし、これらの方法は実は大変危険を伴います。テープなどを貼ることで、壁の内側に溜まった水の出口を塞ぎ、内部のカビや腐食を余計に増加させてしまう原因になってしまうのです。雨漏りが発生したら、自分で判断せずに、なるべく早く業者に調査してもらうことで、二次被害の拡大を防ぎましょう。
業者が修理する場合の流れ
雨漏りが少しでも疑われる場合は、まずは専門業者に相談しましょう。相談~修理までの流れは次のようになっています。
- 電話やメールでの相談・問い合わせ
- 建物の現地調査・点検に来てもらう
- 修理方法の提案・見積りを見て、修理を依頼するかどうか判断する
- 補修・修理工事の契約
- 着工~完成
- 引渡し前点検・引き渡し
- アフターサービス期間
雨漏りの調査方法や各段階で発生する費用は、業者によってまちまちです。
雨漏りの調査方法
雨漏り修理の専門業者では、主に次のような調査方法で雨漏りの原因を探っています。
- 目視による調査
雨水の侵入経路を推測して、屋根に登ったり、天井裏を覗いたりし、目視で調査をすすめていく方法です。
- 散水調査
原因箇所を正確に探るために、雨水の侵入が疑われる箇所に散水し、雨漏りの再現を試みる調査方法です。
- 発光液調査
発光塗料を混ぜた特殊な液体を雨水の侵入が疑われる箇所から流し込み、屋根裏などから紫外線を当てて、雨水の侵入箇所や経路を特定します。散水調査である程度侵入箇所の見当をつけておき、そこを更に重点的に調査する、という方法をとることが多くなります。
- 赤外線サーモグラフィによる調査
建物内部に雨水が侵入してきても、建材が吸い込んでしまって、すぐには外へ出てこないことがあります。赤外線カメラを使って建物の表面温度を測定すれば、水が滞留している場所を特定することができます。これも散水調査の補助的な役割として使用されることが多くなります。
雨漏り修理業者は、さまざまな調査方法を組み合わせて雨漏りの原因を探っています。中には独自の調査方法を開発している業者もあります。
目視調査や散水調査だけですぐに原因が特定できる場合もあれば、さらに次の調査へすすむこともあるので、調査時間はまちまちです。通常1~2時間で終わることが多いのですが、複雑なケースでは半日~1日かかってしまうこともあります。また、建物の環境や調べる箇所によっては、足場が必要になることも知っておきましょう。
調査の規模や方法によっては、調査だけでも有料になる業者もありますので、事前に費用をよく確認してから調査をすすめてもらいましょう。ただし、原因を正確に突き止めないことには修理の方針も決まりませんので、原因調査が雨漏り修理の1番大事な部分になります。せっかく修理をしても、雨漏りが直っていなければ元も子もありませんので、最初にしっかり調べてもらうのが得策です。
費用相場
雨漏り修理費用は業者によってかなり差があります。参考までに、一般的な相場をおさえておきましょう。
- 相談・・・無料
ほとんどの業者が、相談は無料で受付ています。まずは気軽に連絡してみましょう。
- 現地確認(目視調査・散水調査)・・・無料~5万円
目視確認も無料であることがほとんどですが、雨漏り原因の特定調査は点検箇所が複数個所にわたることから、有償で行っている業者もあります。目視で原因がはっきり特定できない場合は、散水調査や専用の道具を使った調査にすすみます。
- 現地調査(その他の調査)・・・5~25万円
雨漏りの原因を徹底的に調査する場合は意外と調査費用がかかります。しかし、最初にこの調査を怠ったために、後で追加工事が必要になり、結局余計に費用がかさんでしまうこともあります。どこまで費用をかけて調査するかは、業者とよく相談しながら決めましょう。
- 雨漏り修理・・・3~50万円
- 屋根の雨漏り修理 3~50万円
- 外壁の雨漏り修理 3~30万円
- ベランダの防水処理 5~15万円
- 窓枠の雨漏り修理 3~20万円
修理箇所別の相場も提示しました。雨漏りの修理費用は、修理箇所が複数に及ぶことが多く、状況により金額が変わってきます。また、足場を組む必要がある場合は、別途足場代が生じます。修理金額を2~3万円とうたっている業者は、しっかりとした調査をせず、自分でできる応急処置レベル(コーキング剤を貼るなど)の補修しかしてくれない可能性があります。
- リフォーム工事・・・100~300万円
雨漏りの二次被害により建材が著しく傷んでしまったときは、一部リフォームもやむをえません。また、雨漏り調査で新築時の設計ミスや施工不良が見つかった場合に、ついでにその部分も修理してもらうケースもあります。
- シロアリ駆除・・・15~25万円
雨漏りの調査でシロアリの被害が発見されることも少なくありません。シロアリは被害が拡大する前に徹底的に駆除する必要があります。
ここにあげた相場はあくまでも目安です。実際は、現場の状況によりそれぞれ異なりますので、見積りをとってみないと分かりません。修理費用をかけたくないからといって放置しておくと、被害が拡大し、リフォームすることになればもっと費用がかかってしまいます。雨漏りは早期発見し、早めに修理してもらうことが修理費用を抑えるコツです。
また、台風などの自然災害では雨漏り修理に火災保険が適用されることもあります。念のため、修理前に保険会社にも問い合わせておきましょう。
業者選びでおさえるべきポイント
原因の特定が難しかったり、被害が大きかったりする雨漏りの修理は、施工も大掛かりになる可能性があります。依頼するなら、信頼できる優良な業者を選びたいものです。業者選びは、次の2つがポイントとなります。
- 見積りや調査が無料である
まずは現地に調査に来てもらわなければ、被害の程度が分かりません。現地調査は無償で行ってくれる良心的な業者を選びましょう。
- 保証期間がある
工事が終了した後も、アフターケアをしてもらえる業者を選びましょう。万一、修理箇所から再度雨漏りした場合、無償で対応してくれる保証期間があると安心です。
また、こちらの相談にきちんと耳をかたむけ、納得いくまで質問に丁寧に答えてくれるかどうかも業者選びの大事なポイントです。
賃貸物件の場合、負担金額はどうなる・・・?
マンションなどの賃貸物件の雨漏りは、借主に過失がない限り、原則的に家主が修理を行うことになります。賃貸物件で雨漏りが発生した場合は、個人で対処する前に、まずは家主か管理会社に連絡しましょう。
また、賃貸物件の雨漏りにより発生した、賃借人の家財道具(パソコンなど)の被害総額や、賃料の減額を賃貸人に請求できることがあります。
まれに、築年数の古い物件などで、賃料減額のかわりに修繕費用を借主が負担する契約が結ばれていることもあります。最初に結んだ賃借契約書の内容をよく確認してみてください。
賃貸物件の修繕に関して、民法には、以下のような規定があります。
<民法第606条1項より>
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
<民法第611条1項より>
賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。
参考サイト 電子政府の総合窓口e-GOVイーガブ
まとめ
今回は床の雨漏りについてお伝えしました。雨漏りをそのまま放置すると、住宅にどのような影響が出るかお分かりいただけたでしょうか。
この記事のポイントとしておさえてほしいのは以下の3点です。
- 床の雨漏りは原因を特定しにくい
- 雨漏りを放置しておくと、二次被害が発生し、リフォームが必要になることもある
- 修理は信頼できる専門の業者に依頼する
業者選びさえ間違わなければ、雨漏りは確実に止められるものです。リフォームのような大掛かりな工事が必要になる前に、雨漏りが少しでも疑われる場合は、すぐに専門業者に相談しましょう。
また、雨漏りを未然に防ぐために、住宅のメンテナンスは定期的に行いましょう。